アンチ・トランプ運動を陰で支える天才投資家ソロスの狙いは何か?
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2月17日付の記事を紹介する。
ソロス氏はこれまでも「中国政府から要請があれば、中国の抱える環境問題やエネルギー問題などの解決はもちろん、このところ緊張状態に陥っている節の見られる北朝鮮との関係においても、打開策に必要な資金援助も惜しまない」とまで発言している。
とはいえ、ソロス氏自身がいまだに中国当局からは要注意人物と見なされているため、東欧や中南米で実現してきたような革命的変革を進めることは当面、中国では難しいとの認識である。とりあえず、彼が描いているのは、「第3次世界大戦を回避するためにも、中国との金融戦争を回避する方策を考えるべき」ということのようだ。
人民元の国際化への動きはあるものの、まだ国際的な信認は十分得られていない。IMFのSDRを中国に与えることも中国を国際的な仕組みの中に組み込む上で検討に値するとの考えを広めつつ、水面下で中国ビジネスのサバイバル環境を整えているフシがある。実際、IMFはそうした決断を2015年末に下した。
たびたび中国問題について発言を繰り返すソロス氏であるが、最も注目すべきポイントは「暴走する機関車・中国」にとっての安全装置はあるのか、というテーマであろう。ソロス氏が「21世紀の望ましい中国像」というテーマで講演を行った際の着眼点は、「中国にとって大事な安全装置は政治と経済社会の民主化を同じスピードで進められるかどうか」ということに尽きる。
政治と経済の両面において、自由で寛容度のある体制ができていなければ、経済という片方の車輪がスパークしたときに、車両全体を支えることはできない。そのような危機管理の一端として「オープン・ソサエティー」という概念を中国にも広めようとしているのである。
アジア戦略に関しては、ソロス氏の発想はヒラリーに近い。というより、ヒラリーにもビル・クリントンにも、多額の政治献金を重ね、ロシアを内部から転覆させようと企てる一方で、中国を自由経済社会に軟着陸させようとするのがソロス流といえよう。
ソロス氏の分析では「中国を関与させない国際政治は歴史的に禍根を残すことになる」。そうした観点から中国のリスクとチャンスを言葉巧みに宣伝する稀代の投資家を自負するため、トランプ流の「ロシア善玉、中国悪玉」の単純な区別は危険だという認識に立っているようだ。アンチ・トランプの最大の狙いは、ここにある。
※続きは2月17日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第54回「アンチ・トランプ運動を陰で支える天才投資家ソロスの狙いは何か?(後編)」で。
著者:浜田和幸
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