2024年12月24日( 火 )

「長崎ホテル清風」の再生に取り組む大江戸温泉物語(前)

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 大江戸温泉物語(株)(本社:東京都中央区、森田満昌代表取締役)は、昨年8月に取得した長崎ホテル清風(長崎市)のエントランス、ロビー、展望露天風呂、レストラン等をリニューアルし、2017年4月29日にオープンする。長崎市内を一望できる稲佐山の中腹にあり、全室から1,000万ドルの夜景を楽しめる。各地で旋風を巻き起こしてきた旅館再生ビジネスを解剖する。

長崎と別府の「ホテル清風」を買収して九州初上陸

 大江戸温泉物語は16年8月16日、長崎ホテル清風(客室数100室、社員46人)と別府ホテル清風(別府市、客室数161室、社員65人)を買収し、九州に初上陸した。

 2ホテルを経営する(株)ホテル清風(旧・清風荘)は1931年に創業した老舗。11年、当時の運営会社が経営破綻したことを受け、旅館再生を手掛ける(株)九州ホテルリゾート(福岡市)に事業を譲渡した。眺望の良い露天風呂やレストランを売りに訪日観光客確保に取り組み収益を改善させた。
 2ホテルの15年12月期の売上高18億6,000万円。買収額は10数億円とされる。改装工事中の別府ホテル清風は17年夏にオープンを予定している。

江戸開府400年を記念して開業した温泉テーマパーク

 大江戸温泉物語誕生の経緯はこうだ。東京都台場の東京臨海副都心で世界都市博覧会が開催される予定だったが、青島幸男・東京都知事の反対で中止。都は跡地利用を検討した。

 プリント配線基板メーカー、キョウデンの創業者の橋本浩氏(現・最高顧問)らが手を挙げた。01年に日帰り温泉施設の運営会社の大江戸温泉物語を設立。03年、江戸開府400年を記念して温泉施設「東京お台場 大江戸温泉物語」を開業。江戸の町にタイムスリップしたかのような雰囲気が味わえる温泉テーマパークとして観光客の人気を得た。

 大江戸温泉物語(以下・大江戸温泉と略す)が急成長に転換するきっかけは07年。橋本氏の発案で、経営が苦しく事業継承に悩む地方の温泉旅館を買収、活性化する取り組みに乗り出してからだ。旅館の再生事業は、ビジネスチャンスが大きいと判断した。平たくいえば、温泉旅館に特化した投資会社に変身するということだ。

買収・再生・転売でリターンを得る投資家

 橋本浩氏は再生ビジネスの風雲児である。経営哲学は明確。「いかに短い時間で、少ないお金で、大きな成果を出すか」だ。それが起業の原点だった。

 橋本氏は1952年2月、長野県生まれ。工業高校卒業後に父を失い、一家を支えるために起業。当時、試作用のプリント基板を短期間で製造するビジネスに極めて高いニーズがあることを知り、すぐに新しい事業を立ち上げた。十分に製造設備をもっていないにも関わらず、試しに広告を出してみたところ、注文の電話が殺到。プリント基板製造装置メーカーを呼び寄せ、大急ぎで機械を据え付け、受注をこなしたという伝説が残っている。83年7月、(株)キヨウデンを設立。会社名は「今日から電気屋」からきているそうだ。

 橋本氏が脚光を浴びたのは再生ビジネスの投資家として。経営破綻したスーパーの(株)長崎屋、経営不振に陥った生鮮コンビニの(株)九九プラスを再建させた実績をもつ。長崎屋は07年にディスカウントストア最大手の(株)ドン・キホーテ(現・(株)ドンキホーテホールディングス)に売却。九九プラスは08年に、コンビニの(株)ローソンに譲渡した。投資家の橋本氏は買収した企業を持ち続ける気ない。転売してリターンを得るのが目的だ。

(つづく)
【森村 和男】

 

(後)

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