2024年08月28日( 水 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~宮崎より

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 日本のプロ野球で監督として最も多くの勝利を記録している監督は、南海ホークスの監督を務められた鶴岡一人監督である。昭和30年代、本当に強い南海ホークスを率いられ、“野武士軍団”西鉄ライオンズと何度も名勝負をされていたのを記憶している。そして監督として1,773勝を記録され、これは歴代1位の勝ち星となっている。
 この監督は多くの言葉を残されているが、そのなかでも「グラウンドには銭が落ちている」――この言葉は有名な言葉だと思う。だが今の時代にこの言葉を伝えたところで、理解できる若い選手がどれほどいるだろうか。

 宮崎でキャンプを行っているソフトバンク、巨人、西武、広島の練習を見ながら、そんなことを考えていた。当時の選手たちが抱えていた、すべてにおいてハングリーな気持ちは、今の時代の選手には理解できないだろう。
 豊かすぎるこの時代だから、鶴岡監督の言葉「グラウンドには銭が落ちているのだから、拾わんかい!!」を言われても、理解できる若い選手たちはいないだろう。

 では、こんなアイデアはどうだろう、物質的にどれだけ豊かになった時代でも変わらないのが、競技に対する研究心。技術に対するハングリーな気持ちなくして、進歩はない。今の若い選手に対して、絶対に持ってほしいのが、「グラウンドには夢がいっぱい落ちている」――こんな言葉が当てはまるのではないかと思う。
 「もっと上手くなりたい」「もっと良い選手になりたい」――これらの夢は、グラウンドで練習すれば叶う夢ではないだろうか。とすれば、グラウンドに落ちている多くの夢を拾い集める努力と気持ちを強く持って、キャンプ生活を送ってほしいもので在る。

2月8日
 ソフトバンクのキャンプ地である宮崎市営球場のスタンドから全体を見ながら、練習している選手の表情やコーチの表情を見ていると、このチームは明日に向かっていると感じることができた。
 一時期、大量補強で固めて強いチームができたが、そのときは「若手はどうなるんだ」と感じたが、今は「若手選手をどう育てるか」の方向に舵を切ってきているように感じる。嬉しいことだ。少し前から3軍制を取り入れ、若手の教育を始めたのが、ここにきて少し育ってきたように感じる。まだ試合に出る段階には来ていないが、育ってきていると思う。あと少し(ここからが難しいのだが)コーチも選手も頑張ってほしい。
 さて今年の戦力であるが、まず投手陣については、マスコミは松坂投手の復活を追いかけているが、やはり和田投手、バンデンハーク投手が軸になり、ローテーションは回るだろう。そこに武田投手、千賀投手、ベテランの攝津投手がどこまで頑張るか。また大物新人の田中投手がいつ爆発するか、楽しみだ。東浜、岩崎、大隣、飯田、山田という投手も出てきてほしい投手である。中継ぎにも五十嵐投手を中心に不安なく、抑えがサファテ投手で締めるというパターンだろう。昨年、少し失敗の多かったサファテ投手の調子が上がらないときに、スアレス投手が頑張れるか、ここが少し気になるところだが、今年も強いチームである。
 この投手陣に比べると、野手陣は少し心配な面を見せている。捕手の固定ということができるか。工藤監督はそのこともあり、達川コーチを招聘したのかな?
 たしかに投手陣はすばらしいのだが、それでも困ったときは出てくる。そのときに助けてくれるのが、捕手である。その捕手は育てなくてはならない。
 内野手に目を移すと、今の時点で今宮選手が肘の故障を抱えているのが気になる。遊撃というポジションでの故障は、送球に直接影響するだけに心配だ。そして1塁を誰が守るのか。今のところ、本命と見ているのが新外国人かな?この選手は、あまり長打を期待するような打ち方はしていないのだが、外国人選手は4月にならないとわからないから、もう少し見て見たい。本多選手、明石選手、3塁の松田選手と見てきたが、しっかりとしたサポーターがほしいというのが本音だ。彼らがしっかりしているだけに、故障したときが心配になってしまう。
 外野手では、上林選手が本物になるか?ここに関心がいく。長谷川選手、柳田選手は決まるが、城所選手、中村選手の状態次第で安定しなくなりそうだから、吉村選手、江川選手は代打ということを考えると、なおさら関心が出る。内川選手は、年間を通してDHで頑張ってもらいたい。
 以前の万全なチームではなくなったが、今年も本命というチームだろう。

2月9日
 勝っても負けても、いずれにしても必ず話題になる球団が、巨人軍だろう。日本で最初にプロ野球球団として足を踏み出した球団で、何と言っても歴史がそれを証明している。

 そんな歴史と伝統に恵まれた球団だが、ここにきて毎年苦しんでいる。「今年の本命は?」といって、「巨人軍」という答えがすぐに返ってこない。

 「今年の心配事は何か?」という問いかけには「若手が育ってこない」――ここだろう。毎年、他球団と同じようにドラフトで有望な新しい選手を獲得しているのだが、計算しているようには育ってきていないということだ。それを埋めるために、ここ何年かは補強の主力は「外国人選手」に頼っているという姿が目立つ。今年も多くの外国人選手を獲得したが、1軍の試合で使える外国人選手は4人までとの規約があり、5人は使えない。ところが、登録している選手だけで10人がいるということで、どうするのかな。6人は控えということだ。若い選手ならば、試合に出なくて練習でも力を維持できるチャンスはあるが、年齢が上がると、試合での緊張感が薄れると本来の力が出なくなる傾向がある。絶えず、適度な緊張感に包まれた環境がほしいということだ。
 ギャレット選手36歳、マギー選手35歳、クルーズ選手33歳――この野手の3人をどう使うのか。マシソン投手33歳、マイコラス投手29歳、カミネロ投手30歳――この3人も使いたい投手だ。たしかに投手の場合、故障ということもあり、スペアとして考えると心強いと見えるが、問題はコンディションだろう。本人たちのプライドのこともあり、楽ではないと思う。

 この外国人選手の問題の次が、日本選手の故障を抱えている問題だろう。以前から問題にしている4番を任せる打者には、1年間試合に出続ける肉体的なタフさがほしいと言ってきたが、誰を使えばいいのか。阿部選手か?村田選手か?長野選手か?
 村田選手、長野選手が143試合の参加、ギャレット選手が123試合に参加、阿部選手が91試合に参加。坂本選手が137試合に参加して首位打者を獲得。年齢も29歳というところで良い時期を迎えているから、巨人軍の4番はどうか。どうもしっくりこない。巨人軍の4番が決まらないということで、大変困っている。

 捕手は、小林選手で落ち着きつつあると見ている。サポーターに実松、相川のベテランを配して、若手の育成を図るというのが、今季のプランでいいと思う。内野手は盛んに岡本選手をアピールしているが、使うなら使うというハッキリとした方針がほしい。村田選手が昨年苦しみながらも0.302厘の数字を残したということにこだわるのならば、2軍でしっかりと育ててもいいと思う。この岡本選手と吉川選手をこの1年で育ててしまうというプランもある。
 クルーズの守りも捨てがたい。でも将来のことを考えると、2塁手は育てるしかないだろう。そんなにいつも上手な二遊間を守れる選手が日本に来るとは思えない。マギー選手をどう使うのか?
 1塁手はもっと困っているだろう、阿部選手、ギャレット選手の併用か?ギャレット選手を外野手として使うのか?
 今怪我をしているが、中堅手として日本ハムから「陽選手」を獲得、右翼に長野選手を配して、左翼だけが決まらないのだが、ここにギャレット選手という手は悪くない。サポーターに亀井選手、足の速い松本選手、重信選手、橋本選手も立岡選手も使える。

 投手陣は今年の方がいいと思うが、年齢が1歳上がったことは考える必要はある。先発が菅野投手、マイコラス投手、田口投手、高木投手、ベテラン内海投手、大竹投手で回した昨年からDeNAから山口俊投手、日本ハムから吉川投手を獲得。杉内投手もどこまで回復しているかわからないが、やる気満々でキャンプに参加してきた。新外国人投手のカミネロ投手も、ここまでのところ速いボールを投げているだけに、出てくるか?
 中継ぎのマシソン投手、山口投手、宮國投手、田原投手の頑張り、澤村投手の安定があれば、十分に優勝戦線に名乗りを上げられる布陣を敷けると思う。

 いずれにしても今年は、2年目を迎えた高橋監督が昨年のシーズンをどのような目線で見ていたのか?巨人軍というチームをどんな目で見ていたのか?これが見られるシーズンになることだけは、たしかだろう。

2017年2月15日
衣笠 祥雄

 

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