2024年12月23日( 月 )

カウベルランド乗っ取り事件 不可解な権利関係への法的見解は?

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 大分県玖珠町の公営施設「カウベルランドくす」が私企業に乗っ取られた事件。3月9日午前、入園を妨害していた大型トラックが姿を消していた。トラックが施設内駐車場へ移動したため、施設内への入園を阻むものはなくなったが、根本的な解決はこれからである。

 事実上の乗っ取りに対し、玖珠町がおよび腰なのは「土地の所有権」だったのは既報の通りだ。土地は玖珠町の所有ではなく、建物は未登記。さらにデータ・マックスでは、同地の「土地賃貸借契約書」を入手。その契約書からも、通常では理解しがたい事情が判明した。

土地賃貸借契約書の一部

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 ご覧の通り、賃貸借契約は指定管理業者である「有限会社 カウベルランドくす」と地権者(代太郎組財産管理組合)との間で結ばれている。なぜ賃借人が「玖珠町」ではないのか。

公金を投じた公営施設である。地権者の意向で、玖珠町が買い上げることをしなかったことは前項で述べた。それ自体、不可解なことではあるが、百歩譲って賃貸借するとしよう。通常なら、賃借人は「玖珠町」とするのが妥当だろう。実際は、指定管理業者が賃借人となっていることから、玖珠町が契約に介入できない状況になっているのだ。しかも、そのような理解しがたい契約に「朝倉浩平玖珠町長」が立ち会っているというおまけつきだ。

状況をまとめる。

土地は法人と個人所有。建物は未登記。賃借人は指定管理業者。この状況が、乗っ取り事件を招き、それが解決されない事態を作り上げている。法的な見解を、弁護士に聞いた。以下がその見解である。


契約というのは、AさんとBさんの法的に拘束力のある約束ですので、AさんとBさんが約束したことはAさんとBさんの間では効力がありますが、部外者であるCさんには影響が及ばないというのが原則です。これは賃貸借契約でも基本は同じです。

 しかし、不動産の賃貸借の場合は、生活や事業の本拠となりますので、不動産の所有者が変わったからといって追い出されたら生活も事業も成り立ちません。そのため、「建物所有目的」の土地の賃借や建物の賃借の場合には、借地借家法が適用され「対抗要件」を具備すれば、賃貸借契約が新所有者であるCさんにも承継されることになっています。

 建物所有目的の借地権の対抗要件は、(1)借地権の登記か、(2)借地上に建物を建築して、借地人名義で登記をするかのいずれかになります。(1)は現実にはほぼ利用されていませんが、本件のように大規模事業で、しかも建物は一部の土地にしか存在しない事業の場合には、借地権登記をしておくのが無難であるとはいえます(広大な土地の一部にしか建物が建っていない場合、建物や倉庫は土地利用の「従たる目的で建てられている」ので、借地借家法の適用対象外にされるケースもあります。)。

 本件事業は地主も交えた事業であった訳ですから、(1)借地権登記も可能であったと思われるのに、何故借地権登記をしなかったのか、(2)借地権登記をしないまでも、町名義で建物の登記をして、町が賃借人となれば賃借権を対抗できた可能性がある(ただし、前記のとおり借地借家法の適用がないという判断がされる可能性もある)のに、登記をしなかったのは何故か、(3)建物所有者である町が賃借契約をせず、運営会社に契約させたのは何故か(町は、なんらの占有権原もないのに土地に建物を建てていることになる)という疑問あるいは責任問題が浮上するのではないかと思われます。


 依然、玖珠町の動きは鈍い。指定管理業者は、町に代わって事業を行う者である。私企業であっても、事実上は町の機能を担う者だ。運送業者の妨害をこれ以上許していいものか。施設は町民の大切な資産でもある。あのすばらしい景観があるからこそ、大自然をテーマにしたレジャー施設が成り立つのだ。住民目線でも納得のできる回答を町は早期に行うべきである。

 次項では、施設内に大型トラックを駐車する「田和通商」の違法性を検証していく。

指定管理者の指定通知

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【東城 洋平】

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