2024年11月27日( 水 )

朴前大統領ついに逮捕される

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 昨年10月に発覚した朴前大統領の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑を巡る今回の事件は、朴前大統領が逮捕されるという運びとなった。

 韓国最大の財閥サムスングループから巨額の賄賂を受けたなどの容疑で、検察から逮捕状を請求された朴前大統領は、憲法裁判所の弾劾宣告から21日目の31日未明に逮捕された。
 朴前大統領は親友であった崔順実容疑者と共謀し、サムスン電子李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の経営権継承を助ける見返りに、430億ウォンを収賄したことと、Kスポーツ・ミール財団に774億ウォンの出資金を強要したという疑いなど13の容疑がかけられている。しかし、朴前大統領は前日に行なわれた21時間に及ぶ判事の取調べに対し、大部分の容疑を否認したと伝えられている。
 国の最高権力者がこのような形で逮捕されることは、非常に遺憾なことであるが、一般市民の間では同情よりも法の前ではすべてのひとが平等であるし、たとえ大統領であっても重大な罪を犯した場合には処罰されるべきであるという世論が支配的である。

 今回の逮捕は、朴前大統領自ら招いた結果かもしれない。韓国の大統領の権限は大きい。権限が大きいということは、同時に責任が大きいことを意味する。朴前大統領は自分自身は一銭も受け取っていないし、自分は全然知らなかったと主張しているようだが、これはリーダーとして資質が欠如していることを物語るだけである。リーダーは監督責任があるし、知らなかったでは済まされない。むしろ国のリーダーとしての責任を痛感し、国民に謝罪していれば、事態はこのようにならなかったかもしれない。朴前大統領は談話では検察の捜査に誠実に応じるとしながらも、今までの捜査に一切応じなかったことなどが国民感情を悪化させている。それに朴前大統領を弁護している弁護団の言動も市民の感情を逆撫でしたのは事実である。法律のプロ集団なのに、常識では考えられない行動と発言をし、結果的には何の擁護にもなっていない。

 検察は十分な証言と証拠を確保していて、大部分の容疑を否認する朴前大統領の答弁を認めなかった。検察も朴前大統領のこのような態度に証拠隠滅の懸念があると思い、逮捕状を発布したとのことだ。それだけでなく、すでに逮捕されている贈賄側のサムスントップ李在鎔(イ・ジェヨン)副会長との公平性なども考慮したようだ。
 朴前大統領は大統領の娘として生まれ、母が銃弾で倒れた後は、事実上のファーストレディを務め、早くも帝王学を身につけたとされている。その後父も暗殺されるなど人生の苦境を経験しながら、朴前大統領は韓国では始めて親に次いで大統領に就任した人物となった。朴前大統領には親である朴正熙元大統領の威光と、女性なので清廉だろうという期待があった。実は期待があっただけで、誰も検証することはなかった。今振り返ってみると、それは韓国にとっては悲劇であった。人事の問題、MERSの発生、セウォル号の沈没、日本との葛藤など在任期間中ずっと問題が続いていた。統治能力も哲学もない政権であった。

 朴前大統領は逮捕されることによって、韓国史上3人目の「逮捕された大統領」という不名誉を得ることになった。韓国の歴代大統領の中では全斗煥(チョン・ドゥファン)と盧泰愚(ノ・テウ)の2人の大統領経験者が1985年に逮捕されたことがある。
 朴前大統領が逮捕されたことで、今まで隠されていた事実が明らかになることが期待されている。外国の有名メディアでは今回のことは韓国の未来にはむしろプラスになるだろうと評価している。痛みが伴っても、韓国社会が公平で、健全な社会に変わることを国民は希望している。
 3年間引き上げなかったセウォル号も、朴前大統領が拘束された時点から偶然急ピッチで引き上げが進んで、引き上げに成功している。
 今後捜査が進むと、疑惑が解明されるだろう。しかし、今世界は大きく激変している。
 内向きにばかりなってはいけない状況である。今回の朴前大統領の件でも明らかになったように、証拠を示しても反対者は証拠を信じない。セウォル号の真相解明を巡ってまたそのようなことが再燃されるのではないかと私は懸念している。
 韓国は不正とか問題があったときに、それを引っくり返すパワーを持っている。それは市民の力でもあるが、方向を間違えると大きな被害も発生しうるので、細心の注意も必要である。

 拘置所に収監される朴前大統領は、今までとは生活パターンが大きく変わることになる。朴前大統領は今までは2時間もかけて美容師から髪を結い上げてもらったが、拘置所ではそのようなことはできない。ヘアーピンなども一切使うことができないようだ。部屋のサイズも1.9坪で、小さいし、食事も1食1,440ウォンの質素な食事になる。朴前大統領としては今まで経験したことのない厳しい生活環境になる。それに拘置所では警護も前大統領としての待遇も受けられなくなる。
 次期大統領選挙は5月9日に行なわれることになっているが、大統領選挙への影響を抑えるため、選挙運動が始まる今月17日より前に起訴するのではないかという見方が広まっている。

 それでは今回の朴前大統領の逮捕は今後韓国の政治にどのような影響を及ぼすだろうか。
 朴前大統領が弾劾、逮捕などで転落するたびに、朴前大統領の支持者の運命も同じ道を辿ることになるだろう。一部では同情論が広がり、保守勢力が結集するのではないかと懸念する向きもあるが、結集の核になる人物が存在しない。もうすでに朴前大統領は時間とともに過去のひとになって行くだろう。

 筆者は朴正熙大統領が統治する時期に大学生活を送った。学生運動、朴大統領の暗殺、戒厳令など激動の次期であった。いろいろなスパイ事件が公表され、容疑者は処刑されたり、拷問を受けたりしていた。やっとそのような時代が終焉を向かえているような気がする。
 今は時代が変わって、昔のロジックが通用しなくなっている。何かあるたびに北朝鮮の脅威というカードを切り出すのは効き目がなくなっている。

 

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