一級建築士免許裁判、残された「構造設計一級建築士」の疑問(前)~仲盛昭二氏
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仲盛昭二氏は2009年6月に一級建築士免許取消処分を受け、国に処分の撤回を求め、訴訟を起こしていたが、11年7月、突然、国は自らの非を認め、一方的に処分を撤回した。その後、13年9月には再び免許取消処分を行った。仲盛氏は、再び、処分の撤回を求める訴訟を提訴し、16年6月、福岡地裁は、仲盛氏の請求を棄却する判決を示した。一審の判決を不服とした仲盛氏は、一級建築士免許を返納した上で福岡高裁に控訴し、今も審理が続いている。
仲盛氏の裁判に関連し、一級建築士免許取消処分が、その上位に位置する専門分野の資格であり、同氏が所持する「構造設計一級建築士」にまで、法的におよぶのかどうかという疑問があった。仲盛氏によると、3月24日付で国指定の講習機関から「構造設計一級建築士の定期講習の受講申込書」が届いたという。それは、構造設計一級建築士の資格が有効であることを肯定するものなのか。この疑問を含めて、仲盛昭二氏へインタビューを行った。
一級建築士免許のみの返納
――仲盛さんは、一級建築士免許を取り消されたと聞いていますが、構造設計一級建築士の更新のための講習の案内が届いたそうですね。一級建築士と構造設計一級建築士は、完全に別の資格ということになるのでしょうか? まず、一級建築士と構造設計一級建築士の違いについて教えてください。
仲盛昭二氏(以下、仲盛) 建築士の資格には、木造建築士、二級建築士、一級建築士があり、一定の規模以上の建物の設計は一級建築士が行わなければならないと法律に定められています。07年の建築士法改正により、構造設計一級建築士および設備設計一級建築士が新設されました。一級建築士のうち、構造設計に関する実務経験を5年以上積んだ者は、構造設計一級建築士の講習を受けることができ、終了考査に合格した者に構造設計一級建築士の資格が与えられます。07年の建築関係法規の改正後は、一定の高度な構造計算(保有水平耐力計算など)には、構造設計一級建築士の関与が義務付けられました。
――仲盛さんの一級建築士免許取消処分というのは、構造設計一級建築士は含まれないのですか?
仲盛 免許取消処分の対象物件の設計時期は2000年~01年です。したがって、06年の建築士法改正(実施は07年)以前の建築士法に基づき処分されたのです。そのため、01年の時点で存在しなかった「構造設計一級建築士」の処分は、法的に不可能なのです。 実際、免許取消処分通知には、「(06年)改正前の建築士法第10条第1項の規定により免許を取り消す。この通知を受けた日から10日以内に、一級建築士の免許証を九州地方整備局長(免許証明書にあっては日本建築士会連合会会長)に返納すること」とあり、「06年改正前の建築士法による処分であること」、「一級建築士の免許を返納すること」が明記されていますが、構造設計一級建築士の資格については、一言も触れていません。繰り返しますが、処分の対象となった行為(設計)の時点で存在しなかった資格に対する処分が、法的にできる道理はないということです。
――仲盛さんは、一級建築士の免許だけを国に返納されたということですか?
仲盛 国からは、1審の判決を根拠とした一級建築士の免許の返納しか求められていません。求められていないことする人はいません(笑)。 現に、一級建築士免許を返納した後、国から構造一級の免許の返納を求められることはなかったので、私の解釈が正しいことが証明されていると言えます。法的に、構造一級の免許も返納しなければならないのであれば、国が放置することなど、あり得ません。
構造設計一級建築士の免許取消については、建築士法第10条の2の2に規定されています。現行の建築士法では、構造設計一級建築士が免許を取り消された場合には、免許の返納を義務付けています。国から私に対して、「一級建築士免許の返納通知」だけが通知されたということは、構造設計一級建築士の資格は取り消されていないということです。私の構造設計一級建築士の資格は、法的に、このような位置付けになっているので、私の氏名が印字された定期講習の受講申込書が発行されたのだと思います。普通に考えれば、先ほど述べたように、2000年~01年頃の設計に対して、当時存在しなかった構造設計一級建築士の資格を処分することは法的に不可能であることは、当然だと言えます。
建築士法第10条の2の2の5項 (構造設計一級建築士証及び設備設計一級建築士証の交付等)
構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士は、第九条第一項又は第十条第一項の規定によりその免許を取り消されたときは、速やかに、構造設計一級建築士証又は設備設計一級建築士証を国土交通大臣に返納しなければならない。――そうすると、現在、仲盛さんは、構造設計一級建築士として設計ができるということですか?
仲盛 設計行為は建築士の独占業務ですから、一級建築士の免許を取り消された状態では、全体としての設計行為はできないのではないかと考えられます。構造設計一級建築士としてのみ、構造設計に関わることができるのかどうか、一級建築士免許の返納後は設計行為を行っていませんので、法的な取り扱いがわかりません。建築士法の改正により、新たな資格が追加されたことと、新しい資格には改正前の法律がおよばないことから生じた、“法的な珍現象”と言えるのかもしれません。
(つづく)
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