2024年11月27日( 水 )

アジアを襲う2大危機 水と食糧の不足

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、4月14日付の記事を紹介する。


 アジア各国では史上最悪の食糧危機が目前に迫ってきている。国連の調査報告書を見ても灌漑システムが機能をしなくなっている農地が急速に増えており、インドや中国、パキスタンなど巨大な人口を抱える国々を中心に農業生産が危機的状況に陥る可能性が高まってきた。このままの状況が続けば、各地で暴動や食糧の争奪戦争が起こることが避けられそうにない。

 かつて1970年代から80年代にかけて、大規模な飢餓が発生しかけた時期もあったが、当時各国政府がこぞって灌漑施設を建設し、新たな種子や肥料を導入したことで史上最悪の食糧危機はからくも回避されたものである。しかし、これら人口大国においてはその後も人口の膨張が続いており、2050年までにはアジア全体で15億人もの人口が新たに増えることが確実視されている。ということは、アジアだけで食糧の需要が現在の2倍に膨れ上がるということである。

 国連の食糧農業機構(FAO)でも世界銀行の傘下にある国際水資源管理研究所(IWMI)でも、こうした状況に対し相次いで警告を発している。アジアの国々においてはすでに農地は開墾が限界に達しており、余分な農地はほとんど見当たらない。しかも、異常気象の嵐は吹き荒れる一方で落ち着きが見られない。大規模なハリケーンやサイクロン、そして地球温暖化の影響と見られる干ばつ、山火事、その他異常気象は農業生産に甚大な被害をもたらしている。その上、水の供給に関しても頭打ちどころか深刻な水不足が日常化してしまった。

 こうした環境の悪化を受け、アジアの農民たちは農業を放棄せざるを得ない状況に追い込まれつつある。人口は増える一方でありながら、食糧や水の供給は先細るばかり。これでは治安の悪化や暴動が頻発することも避けられそうにない。

 現在の灌漑システムは、建設からおおむね50年から70年が経過しており、すでに耐用年数が過ぎたといっても過言ではない。各地で水漏れが発生しており、必要な農地に必要な水量が行き届かないという状況になっている。灌漑設備の更新や補強が早急に必要とされているが、各国とも財政状況が厳しく必要な手立てが講じられないままとなっている。

 ちょうど10年前の2007年、アジアやアフリカ各地で食糧を求める住民の暴動が発生したものである。40を超える国々で、飢えた国民が食糧品を扱う店を襲ったり政府の備蓄倉庫を襲撃したりする事件が相次いだ。当時の状況はこれから巻き起こるであろう大規模な食糧争奪戦争の予兆に過ぎないと言えそうだ。実効ある緊急対策が講じられない限り、アジア各国で食糧を求める飢えた農民や住民によるデモが巻き起こるに違いない。こうした社会不安が広がれば、テロ組織が暗躍する可能性も一段と高まるだろう。

※続きは4月14日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第61回「アジアを襲う2大危機:水と食糧の不足(前編)」で。


著者:浜田和幸
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