豊洲新市場耐震問題、半強制的な安全宣言は御用団体(JSCA)会長への踏み絵
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都知事と日建設計に黙殺された耐震問題
築地市場の移転をめぐり、小池百合子東京都知事の判断が注目されている豊洲新市場。そのなかで土壌汚染問題が問題視されているが、新市場の問題は他にもある。建物の構造設計の問題だ。この問題を指摘した、構造設計一級建築士の仲盛昭二氏(協同組合建築構造調査機構代表理事)によると、「ある雑誌社から豊洲新市場の水産仲卸売場棟の構造計算書を預かり、調査したところ、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱がピン柱脚であるにもかかわらず、柱脚固定と偽装されて構造計算が行われ、15%程度、耐震強度が偽装されている」という。
仲盛氏は、この事実を小池都知事ら都政関係者に通知したが、何ら反応がなかった。既報の通り、NetIB-NEWSでも小池都知事および設計を担当した(株)日建設計の亀井忠夫社長あてに質問状を送付したが、2週間の回答期限(4月15日)を過ぎた現在、何ら回答を得られていない。
豊洲市場の水産仲卸売場棟の保有水平耐力比(耐震強度)は、東京都条例で定めた「1.25」ギリギリの値。仲盛氏の指摘通り、15%も減じられた場合、都条例の規定値を下回り、都民の台所となる建物の耐震性にも大きな問題を残すこととなる。このような構造上の重大な問題を抱えている建物であるにもかかわらず、構造専門家の団体の代表者が、市場問題プロジェクトチームの会議の席上、「構造上の安全性は問題ない」と発言していたことが明らかになった。第3回市場問題プロジェクトチーム(2016年11月29日)に建築構造の専門家として出席した(一財)日本建築構造技術者協会(略称:JSCA)会長の森高英夫氏は、「通常の建物よりもワンランク上の耐震安全性が確保されていると私は判断した」と発言。仲盛氏の指摘とは対極にあるといえる内容だ。
この森高氏の発言について、仲盛氏に見解を求めた。
――市場問題PTにおけるJSCA会長・森高氏の発言は、仲盛さんのご指摘されている耐震性の問題を無視した内容です。
仲盛 JSCAは、国(行政)や大企業の御用団体に成り下がっており、大手(日建設計)にとって不都合な発言をするわけがありません。JSCAの会員である構造設計技術者のほとんどは、設計事務所やゼネコンから仕事を受注しています。ご存知の通り、豊洲新市場を設計した日建設計は、日本最大の設計事務所です。日建設計に逆らえば、JSCAの会員の仕事の受注に悪影響がおよぶと考えているはずです。日建設計に限らず、他の大手からも敬遠されると思います。立場上、森高氏は、真実よりも、組織や会員を優先せざるを得ません。
――構造設計一級建築士として、行政とJSCAの関係性について、どのように思われていますか。
仲盛 本来であれは、会員の技術を向上させたり、行政に対して、建築に関する提言を行ったりするべき団体であって欲しいのですが、残念ながら、現状はそうなっていません。その実態をよく表わしているのが、構造設計一級建築士制度が創設された際の、「JSCA建築構造士」に対する異常な優遇措置です。
構造設計一級建築士は、5年以上の建築構造設計に関する実務経験を積んだ一級建築士が講習を受け、2つの分野の考査に合格しなければ取得できない資格です。考査は非常に厳しく、年に一度の考査で、全国で200名前後しか合格できない狭き門となっています。
ところが、この資格制度が始まった当初、建築確認申請を行うために一定数の構造設計一級建築士を確保する必要があり、国は、あろうことか、民間団体であるJSCAの「JSCA建築構造士」という民間資格の所持者に、国家資格である構造設計一級建築士の考査の2つの分野のうち、難しいとされている分野を免除しました。私は、この措置について、「JSCA建築構造士」が考査を受けた場合、大半が不合格者となることを予想し、構造設計一級建築士の不足による大混乱を避けるためであったと推測しています。この考査免除でJSCAは、国に隷属する団体となり、行政に対して、何も言えない立場となっているのです。――豊洲新市場の安全宣言は、まるでJSCAに踏み絵を踏ませるような話ですね。森高氏は専門家としての正義ではなく、JSCAの安寧を優先させたということになります。
仲盛 私は、福岡県久留米市の欠陥マンションの裁判において、原告側区分所有者の技術支援をしていますが、自組織の利益を優先する考えは、この裁判における、行政・久留米市や、施工業者・鹿島建設とまったく同じです。行政組織の責任を回避することや、企業の利益を1円たりとも損じないためには、真実を握りつぶし、平気で、黒い物を白という。
鹿島建設などは、「図面通りに施工したので瑕疵はない」と主張していましたが、図面に明記された梁を30カ所も施工していないことが判明しています。また、「施工の瑕疵はない」という一方で、下請の地場企業(栗木工務店)に対し、「施工が悪く危険な状態となっているので、補修費用を賠償せよ」と損害賠償を提訴していました。瑕疵だらけのマンションを購入した区分所有者に対しては、施工の責任を一切認めようとせず、下請業者からは賠償金を取るという、大企業のエゴ丸出しです。
忘れてならないのは、行政や大企業、その御用団体のために、国民が犠牲になってはいけないということです。きれいごとを言うつもりはありませんが、国民の安全は、何よりも優先されるべきです。行政や企業の責任と人命のどちらが重いか、大組織の中にいると、こんな当たり前のことがわからなくなるのでしょうか。私の意見に対し、JSCA側から反論があると思いますが、反論はいくらでも受け付けます。【伊藤 鉄三郎】
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