自動運転で急激に注目を集める、車載半導体市場の行方(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
米市場調査会社のIHSによると、車載半導体の2016年の世界市場規模は291億ドル300万ドルで、17年は311億3,700万ドルになると予測されている。
車載半導体の世界シェアでは、以前は日本のルネサスが1位だったが、オランダのNXPを買収したクアルコムが1位に躍り出ている。次いで2位がルネサス、3位がドイツのインフィニオンになっている。半導体といっても、車載半導体は一般の半導体と違って、高い安全性と耐久性が要求されるため、ハードルが高い。マイナス40度~プラス150度の動作温度、15年間の寿命保証、不良率0%などが求められる。それに、ライン認定などのハードルもある。
しかし、自動運転車の実現をめぐって、開発競争が繰り広げられているなかで、市場に大きな変化が起きようとしている。
通信用半導体の世界1位だったクアルコムは、車載半導体1位のオランダのNXPを5兆円で買収することで、車載半導体市場に参入している。また、半導体の世界王者であったインテルも、パソコンの市場がだんだんと縮小されていくことに危機感を覚え、将来性のある車載半導体市場を狙っている。インテルは、カメラセンサーの世界一の技術を持っているモービルアイ社を153億ドルで買収した。さらにグラフィックチップの世界一の会社で、画像処理では最も優れた技術を持っているNVIDIAも市場に参入している。現在、人工知能などを搭載した自動運転の分野では、NVDIAが先頭を走り、その後ろをインテルとクアルコムが猛追撃しているようだ。しかし、前述の3社だけではない。DRAMや3D NANDフラッシュメモリの世界の王者であるサムスン電子も、車載半導体市場を狙っている。
そのサムスン電子は16年11月、米自動車部品メーカーのハーマン・インターナショナルを80億ドルで買収し、この市場への参入を明らかにした。
既存の車載半導体の強者であるルネサスも、手をこまぬいているわけではない。ルネサスは、自動車部品の世界的な会社であるボッシュ・グループと自動運転車の開発で提携したり、米インターシル社を買収したりして、手を緩めていない。世界的な半導体メーカーが競争を繰り広げる車載半導体市場であるが、なかでも自動運転車に車載半導体が多量に使われることが予想され、激戦が予測される。自動運転車用半導体は、ディープラーニング機能を備えた人工知能(AI)が基本的に搭載されることになる。自動走行が実現するためには、レーダー、センサー、カメラの搭載が必要であり、そこから得られた情報を分析し、周辺環境や前方の車を探知し、コンピュータが制御することになる。その情報の収集と分析を、人工知能が行うことになる。そのため、人工知能半導体を制覇する会社が、自動運転市場を制覇することになると言われている。
自動運転車の別の側面を見ると、自動運転車はスマホの役割と開発過程が似ている部分が多い。自動運転車は常にネットに接続されており、リアルタイムでソフトウェアをアップデートする必要がある。そのソフトウェアを開発し、通信機能を持たせ、アップデートし、セキュリティも保障することは、スマホの開発会社がやっていることである。その意味においては、クアルコムとサムスン電子は自動運転半導体の開発において有利な立場になるかもしれない。NVIDIAはアウディ、ベンツと手を組み、インテルはBMWと、クアルコムはフォルクスワーゲンと手を組んで、自動運転車の開発に取り組んでいる。
残された最も大きな半導体市場である車載半導体市場において、どこのメーカーが勝者になるのかは、もう少し様子を見る必要がありそうだ。
(了)
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