福岡市の中国公務員研修受入に関する覚書、5年間放置で期限延長せず
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軽率かつ無責任な高島市政は日本のリスク
福岡市の高島宗一郎市長は15日、7月5日に期限を迎える中国との間で締結した中国公務員の研修受入に関する覚書について、「依然として尖閣諸島をめぐる緊迫状況が続いている」などとし、延長の意思がないことを表明した。福岡市議会における冨永正博市議(東区)の質問に対する答弁。
中国公務員の研修受入に関する覚書は、2012年7月6日に高島市長が北京を訪問し、日本の「庁」にあたる政府機関・中国国家外国専家局との間で締結した。研修は、都市景観、節水技術、ごみ処理、環境保護、住みよい都市の建設および管理、高齢化社会への対応などの分野で行われ、中国公務員の専門技術者や管理者など年間800人、5年で累計4,000人の規模で実施されることが検討されていた。覚書の有効期限は5年とされ、福岡市と中国側の双方の同意で延長することができる。
しかし当時、高島市政は、研修受入について市議会に諮ることなく交渉を進めており、直前の同年7月3日に高島市長が記者会見で発表したことで「議会軽視」との厳しい批判を受けたほか、技術流出などを懸念する市民の猛反発を招いた。これを受けて、市は同年9月、尖閣諸島の領有権に関する中国における反日デモの悪化など日中関係の緊迫化を理由に、中国側に研修受入の実施見送りを伝えたという。
冨永市議の質問に対する市側の答弁で、実施見送りから現在に至るまで、中国側との間で、実施に関する協議などを一切行っていない事実も明らかになった。また、危惧されていた技術流出について、市側は、細菌兵器への利用が可能なことから国家機密となっている海水淡水化技術の一部に関し、対策を十分にとり、国や関係企業の確認をとっていたと強調した。
市側の説明では、実施見送りの理由は日中関係の緊迫化のみに絞られたことになる。では、この5年間、日中関係の状況に変化はなかったのか。冨永市議は、近年、クルーズ船などで多くの中国人観光客が福岡市を訪れているなど、緊張がいく分和らいでいる状況を指摘し、覚書を放置してきた高島市政を「信義にもとる」と厳しく批判。中国との覚書が忘れ去られ、ただの紙切れとなっていた事実を浮き彫りにした。国家を相手に交わした約束を一方的に無視する高島市政は、福岡市民だけでなく国民にとっても、重大なリスクといえるだろう。
【山下 康太】
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