日台オープン・イノベーションの夜明け~BBA視察団報告(前)
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台北でICT見本市「Computex Taipei 2017」が5月30日から6月3日まで開催された。同見本市視察を兼ねて、(一社)ブロードバンド推進協議会(略称:BBA、代表理事:宮内謙)視察団(村上臣団長:ヤフー(株)執行役員 CMO・IDサービス統括本部長)の約20名が来台した。これは、昨年10月5日に、今後の情報通信産業の発展に向けて締結した「台湾政府 工業技術研究院(ITRI)とBBAとのパートナーシップ」(MOU・了解覚書)に基づく技術情報交流の一環である。
5月31日(水)に行われた視察ツアー(国立交通大学~ITRI情報通信研究所(ICL)~アドバンテック社~デジタル・イノベーション交流会など)に同行した。アジア・シリコンバレー推進計画の中心の新竹市
31日午前8時に台北市内のホテル「国賓大飯店」(約50年の歴史を持ち日本人に愛される老舗ホテル)に約20名が集合、迎えのバスに乗り込み、新竹市に向かった。新竹市は蔡英文総統が掲げる5大産業政策の1つである「アジア・シリコンバレー推進計画」の中心となる都市である。同プランでは、2025年までにモノのインターネット(IoT)の世界シェアを5%に引き上げたいとしている。
1時間30分ほどで新竹地区に到着、最初に向かったのは、Foxconn(フォックスコン、漢字表記では鴻海科技集団。本社は台湾で主に中国に生産拠点を有する。電子機器受託生産 (EMS) では世界最大の企業グループ)と国立交通大学の産学連携によるスタートアップ支援施設(IAPS)である。ここでは、IAPS発のスタートアップ企業4社のプレゼンを受け、発表者と視察団との情報交換後、施設内の見学が行われた。次に視察団は約20分で、同じ新竹地区にある今回の視察招聘先である「台湾工業技術研究院(ITRI)」に移動した。
特許取得件数は2万件、260社のベンチャーを育成
台湾工業技術研究院(ITRI)は、台湾政府 経済部 工業局の直轄機関(日本の産総研に相当)で、1973年に設立された台湾の頭脳とも言える研究開発機構である。研究者を約6,000名抱え、科学技術の研究開発により、産業発展と経済価値を創造し、社会福祉を促進することがミッションとなっている。これまでの特許取得件数は2万件を超え、また260社に及ぶベンチャー企業を育成してきた。今回のBBA視察団の招聘(しょうへい)は同研究院ITRIの情報通信研究所(ICL)が窓口となっている。
同研究院に着いてすぐに、ランチミーティングが始まり、同研究所ICLの周勝鄰副所長、続いて陳春秀ディビジョンディレクターから歓迎の挨拶を受けた。視察団を代表して、返礼したのは村上臣団長である。村上氏は団長として簡単な返礼をした後で、立場を変え、ヤフー・ジャパンの投資家として、スタートアップ企業に投資する際の会社の見方を次のように披露した。
豪華な家具が置いてある所には100%投資しない
「ヤフー・ジャパンはソフトバンクグループの一員です。ソフトバンクは世界中で投資を行っていますが、ヤフー・ジャパンの投資子会社であるYJキャピタルにも約260億円の独自のグローバルファンドがあり、私は主にテック系(セキュリティ、ビッグデータ、IoT関連など)に投資を行っています。
私がスタートアップ企業の投資判断をするポイントは2つあります。1つ目は、チームの力です。シード期(創業前の準備検討時期、もしくは創業間もない時期)やシリーズA(スタートアップ企業が直面する第1回の外部からの大規模な資金調達ラウンド)などでは、そこにすごいアイデアがあったとしても、そのことだけで投資をすることはほとんどありません。それを実行するチームが100%、120%その仕事に集中できているかどうかをよく観察します。そのため、私はスタートアップ企業の面接は、自分から相手のオフィスへ出向くようにしています。普段、働いている環境を見ると、その会社がどのような方針、考え方で動いているかが一目で分かるからです。日本のスタートアップ企業などによくある例ですが、なぜか会社に豪華な家具が置いてあったり、受付が妙に豪華だったりすることがあります。私はそういう会社には100%投資しません。もちろん、家具を作っているスタートアップ企業は別です。重要なことは、投資家から預かったお金の使い方です。効率よく、無駄なく、ビジネスの成果に結びつけることを、真剣に考えているかどうかが重要なのです」
同時に同じアイデアを考えている人は世界に10人
「2つ目は、アイデアを実現するスピードです。素晴らしいアイデアであってもアイデアだけでは意味がありません。同時に同じようなアイデアを考えている人は世界に10人くらいいるでしょう。フェイスブックが流行った時、私も同じようなことを考えていました、という人が100人くらいいました。そこから現実に商品が完成して、ユーザーの手に渡るまでの期間をどれだけ短くできるかが勝負になります。先ほど申し上げたチームの話とも関係しますが、1人で全部やることはできないので、ここでは適切な役割分担、全員が同じスピードでパラレルに仕事ができることが重要になってきます。とにかくスピードです」
台湾企業は日本進出に関しアドバンテージがある
最後に村上氏は日台オープン・イノベーションに関連して台湾側に次のようなエールを送った。
「日本でビジネスを行う場合は日本のことをよく知る必要があります。この点については、私たちBBAが協力できる部分も多いと思います。私は個人的に思っているのですが、台湾企業は日本進出に関しアドバンテージがあると思っています。米国の企業でも中国の企業でも、自国で成功した後、日本にやってくることが多いので、自国での成功体験が抜けきれません。台湾のスタートアップ企業は日本文化にも詳しいことが多いので、日台がうまく手を取り合えば、日本市場、世界市場で充分に戦うことができると思います。そのように協業できる日が来ることを楽しみにしております」
視察団はランチミーティングの後、スタートアップ企業5社のプレゼンを受け、情報交換、ショールームの見学を行った。
その後、視察団は桃園地区に移動し、台湾の代表的なマザーボード、産業用コンピューターメーカーのアドバンテック社を見学、最終目的地である台北世貿易センターへ向かった。同会場では、前半は台湾のクラウド・ビッグデータ・ゲームなどのプラットフォーム関連企業3社のプレゼンを受け、後半は経済局工業局 游振偉副局長主催の懇親会が行われ、すべてのプログラムは午後9時30分に終了した。
(つづく)
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