試練に晒されている文大統領の外交(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
お断りしておくが、私はプロの政治評論家ではない。今回は、一般市民の目線で、韓国外交はどのような方向に進もうとしているのかを書いてみたい。
外交の世界では、国力が物を言う。韓国のように世界列強に挟まれていては、外交は甚だ難しい。それに、いつの時代もそうであったように、外交というのは、表向きにはいろいろな理屈はあっても、結局は自国の利益を優先することになる。現在、世界各国はそれぞれ大きな課題を抱えていて、露骨に自国の利益追求に躍起になっている。
そのような状況のなかで、韓国に課された外交課題は、北朝鮮の核開発の中止、THAADミサイル配備に関する決定、慰安婦問題の円満な解決などであろう。
まず、韓国の国内事情に触れておこう。去年10月ごろから文大統領が就任するまで、韓国の政治には空白があった。今、1つずつ明らかにされているが、常識では考えられない国政介入、不正と不透明な意思決定が前の政権では行われていた。
たしかに韓国は、普通なら100年くらいかかる経済成長を30年という短い期間に成し遂げた国である。しかし、高速成長がもたらした社会のさまざまな弊害が、今まさに噴出し始めている。
筆者の世代は、親の世代の苦労もよく知っていると同時に、親の世代の問題もよく知っていて、それを変えたいという問題意識を持った世代である。経済が大事であることには間違いないが、経済発展のためにすべてが犠牲になるべきではないと考えている。経済成長が少し遅れることになっても、このあたりで韓国社会を改造しないと、韓国に未来がないと思っている。朴前大統領に対する弾劾は、旧時代に対する弾劾でもある。今回、ろうそくデモを主催したのは、民労組という極左団体であるという指摘もあるが、今回のデモを通じて国民は極左の主張に賛成したわけではなく、新しい時代の到来を希望したのだ。日本のマスコミでは、国民の感情に流されて朴大統領が弾劾されたという主張も見られるが、それは事実をあまり知らない話である。
また、日本のマスコミでは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を親北と決め付けているが、実際は少し違うような気がする。
文大統領は、貧しい家庭で生まれ、人権弁護士という道を歩んでいたため、経済的にはそれほど恵まれなかった。特権意識や優越感で人の意見を聞こうともしない前大統領とは対照的で、そのような側面が国民に大いに受けたかもしれない。文大統領は盧大統領の秘書室長として国政に深く関わった経験もあって、その経験が有効に活かされることを国民は期待しただろう。文大統領は人の意見を傾聴し、よく考えてから行動に移すタイプである。弁護士であったため、人の話を聞いて判断する能力に長けていて、頭も明晰なようだ。しかし、そのような文大統領にとっても、外交問題は大きな試練になるだろう。ところが、日本のマスコミが伝えているように、北朝鮮一辺倒ではない。このあたりを日本人に理解してもらうことは、並大抵のことではない。韓国国内でも北朝鮮に対して下手な発言をすると、すぐ北朝鮮に同調する勢力として罵倒されることもあるので、意見を言うのも、慎重にならざるを得ない。
(つづく)
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