もはやアメリカに学ぶものはない?小売業最先端アメリカの実像(3)
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変化を繰り返し、時代に適応し続けるSC
マンハッタンから約30キロ、車窓に細く冷たい春の雨の中でわずかに芽吹くヤナギやニワウルシを見ながらニューヨーク州東部のロングアイランドの付け根にある「グリーンエーカーズ モール」に着いた。この地域は白人が多く、所得も高い。
5万坪を超える敷地にキーテナントとして家電最大手のベストバイ、百貨店のメイシーズ、ホームセンター最大手のホームデポなどのサインが見える。複数の巨大アメリカ小売業を核に持つ巨大SC である。ウォルマートもその一つとして入居している。新しい業態というイメージがあるSCだが、ここは1956年に作られたSC でオープンからすでに60年。それにもかかわらず、新しいイメージを保っているのは常に時代を反映した施設を意識し、投資とテナントの入れ替えが進んでいるからである。もちろん、核店舗も入れ替わる。そうすることでデベロッパーはSC自体の価値を高め、機会があればそれを売却し、さらに別の不動産に投資する。この国では開発業者も油断をすればあっという間に破産する。だからこそ、半世紀以上たった今でも新鮮なイメージでその価値を保っているのである。
店舗の一等地に新しいコーナーが・・・アメリカ改革の特徴を見る
ニューヨーク郊外のウォルマート 店内受取のカウンターと返品受け付け専用のコーナーが入口にある 店舗総数11,695店、売上485,873百万ドル(米国内367,784百万ドル)、粗利益率24.9%、経費率21.2%。経常利益率にいささかの低下傾向が見えるものの、ウォルマートはまさに巨人である。しかし、この巨人は時間の経過とともに生まれがちな陳腐化とは無縁だ。まず、その価格競争を際立たせる「セイビングキャッチャ―」。スマホのアプリ登録で近隣の競合店と自動的に価格比較をし、もし競合より高ければその差額を電子マネーで顧客に補填する。競合店は自店の周辺の店すべて。競争相手にとっては始末に困るサービスだ。
さらに、eコマースにも対応している。消耗頻度の高い食品や雑貨をネットオーダーして店舗で受け取るという便利システム、「リオーダーナウ」も好評だ。
肌着や日用雑貨、加工食品など、定期的に購入する消耗品をeレシートなどのデータからリスト化しておき、それを基に発注をスマホなどで事前に行い店舗の専用カウンターで受け取るというサービスだ。
購入頻度の高い非生鮮品をネットで注文し、鮮度や品質の確認が必要な生鮮品は自分の目で選ぶ。店舗面積が広いうえに買い上げ点数が多く、時間によってはレジ待ちが長くなるウォルマートだから、顧客にとって時間節約のメリットは大きい。
そんなウォルマートのeコマース経由の売上はすでに100億ドル、その客数も月間5,000万人になるという。既存の業績に胡坐をかくことなく、リスクをとりながら新たなトレンドに挑戦する。しかも、生鮮食品の品質向上、オーガニックへの挑戦などその改善意欲に衰えは見られない。ここニューヨーク郊外のグリーンエーカーモールのスーパーセンターでも、入口のすぐ右手に受取カウンターを設けていた。
さらに注目すべきは返品に対する配慮である。入口の最前面にしかも二人の返品対応要員を配置している。いずれもわが国では考えられない対応だ。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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