中国経済新聞に学ぶ~「中国トップ富豪」王健林氏の墜落(前)
-
王健林は中国トップの大富豪である。2015年10月に胡潤研究所により公開された中国百大富豪ランキングにおいて、62歳の王健林は2,200億元の財産をもって、アリババ総裁の馬雲を抜いて2度目のトップに立った。彼の財産は前年に比べ52%増加している。
そして2年後の17年7月、王健林の有する万達グループが13の文化旅行施設および76のホテルを緊急売却し、632億元の資金を集めることが発表された。
この突然の変化は、人々に強い驚きを与えた。不動産資産の緊急売却
8月10日、王健林の指揮する万達グループの公式Wechatにおいて、万達グループが不動産から完全に撤退し、アセットライトに舵を切ることが発表された。不動産から始まった万達グループが不動産を捨てることになったのだ。いったい王健林に何があったのか?
万達グループの17年の年次総会において、2020年以降の万達商業は原則としてアセットヘビーを行わず、アセットライトのみに注力することを王健林は宣言していた。
王健林はさらに、このような皮肉も言っている。「万達商業はもう不動産会社ではない。2017年の年末か2018年には『商業地産』の企業名も変えてしまおう。『商業投資管理サービスグループ』と名乗って、もう不動産会社ではなくなろう」と。中国の不動産市場で30年近く奮闘してきた王健林は、おそらく「高みにいればその寒さに耐えられない」という言葉を最も強く実感しているだろう。ここ数カ月、人々の目をくらませ驚かせるような一連の資本運営によって、王健林は総額1,109億元(約1兆7,745億円)にも上る資産の大移動を完了させている。
なぜ王健林は、これほど急いで資産を投げ売りしているのか?
1つの大きな原因として、習近平が最近、中国不動産市場における高止まりの問題について「部屋は住むものであって、転がすものではない」と語り、不動産市場の投資需要を厳しく抑制するよう求めたことが挙げられる。
この指示によって、中国の大銀行は万達グループに対する貸し付け、とくに万達が海外企業を買収するための資金的支援を全面的に停止した。海外買収による外貨資本の流出
澎湃新聞の不完全な統計によれば、12年に海外で最初の買収――アメリカ第2の映画館企業AMCを26億ドルで買収した――を行ってから、現在までに万達の海外投資総額は2,451億人民元に達している。
これには王健林がかつて宣言した、万達がそれぞれマレーシアおよびインドネシアで行う2つの百億ドル級プロジェクトは含まれていない。かつて王健林は17年1月の冬季ダボス・ディベートにおいて、万達は毎年50~100億ドルの海外投資を行っており、投資はエンターテインメントおよびスポーツ産業に重点を置き、さらにアメリカを最優先、次点をヨーロッパとして投資していると語った。
3年間で買収したのはホテル、遊覧船、エンターテインメント、スポーツなど広義のエンタメ企業である。
政府側から見れば、このような資産は明らかに国家が必要とするものではなく、また国家産業規格における「高級、精密、先端」産業にも合致しない。
政府側にとって、海外買収による外貨貯蓄の安定を脅かしており、それにより人民元レートの安定性をも揺るがせている。
15年および16年の海外買収ピークの時期に、中国の外貨貯蓄が2年間で1兆ドルと大幅に下降し、人民元の下落に確実に影響をおよぼしており、これは管理層にとって許容できないことである。王健林はかつて「自分が苦労して稼いだ金だから、投資したいところに投資する」と語っている。王健林が稼いだ金は、本当に苦労して稼いだ金なのだろうか?
万達グループの土地調達コストは非常に低い。王健林は「政府に近く、政治に遠く」と語ったが、聞くところによると万達には専門の政府研究所があり、100人単位の研究員が配置されているという。どんなプロジェクトを行う際にも、官僚に対し非常に細かい考察を行い、顧客に対するように官僚に接しており、官僚個人に注目しているという。
つまり、万達は土地取得の過程において、各地の官僚への贈り物を否定せず、それにより一種の利益関係を築いているということだ。
そのため、万達グループの低コストでの土地調達及び急速な拡大の背景は、政商関係が非常に大きいということだ。短期間で2,500億元近い海外買収および海外投資が行われた。「その資金はどこへ行ったのか?」「どこから来ているのか?」「何を買ったのか?」「本当に万達の業務と密接に関係しているのか?」「万達には本当にこれほどの現金があるのか?」。
中国高層にとって王健林率いる万達グループは、かたちを変えた海外への資産移しというだけでなく、中国人の金を使って外国人の雇用機会を作っていると見られている。(つづく)
中国経済新聞を読もう
<連絡先>
■(株)アジア通信社
所在地:107-0052 東京都港区赤坂9丁目1番7号
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:china@asiahp.net
URL:http://china-keizai-shinbun.com関連キーワード
関連記事
2024年11月20日 12:302024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年11月22日 15:302024年11月18日 18:02
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す