2024年12月23日( 月 )

日本最大級!回復期病院の実績に見る独立独歩の事業展開(前)~巨樹の会

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一般社団法人 巨樹の会(カマチグループ)

 リハビリテーションを専門に行う回復期病院で2,779床という日本最大級の数を誇る(一社)巨樹の会。その創設者である蒲池真澄会長が、山口県下関市で個人開業したのが1974年4月。以来43年間、「厚生省(当時)の政策を10年先取りして動かねば」と独立独歩で事業を展開し、現在、東京都における回復期病院の病床数では20%のシェアを有するに至った。7月18日、東京ビッグサイトにおける高齢者住宅新聞社主催のフェアで行われた巨樹の会・桑木晋副理事長の講演をもとに、医療のみならず、日本が抱える社会課題においても最先端を行く、同法人の実績をふまえながら、『時代をリードする経営戦略』について考察する。

日本最大規模の回復期病床数

10月に開院する江東リハビリテーション病院

 急性期(救急救命)と回復期(リハビリ)を中心とした病院22、診療所3、事業所2のほか、現場を支える看護師・セラピストや助産師などを育成する7つの専門学校を運営するカマチグループ。そのなかで、主に回復期病院を担当するのが、(一社)巨樹の会である。

 巨樹の会は、昭和20年代に大洋漁業(現・マルハニチロ)が設立し、介護療養や通所リハビリも含む公益性の高い医療を手がけていた彦島病院(林兼病院から1995年3月に名称変更)が前身。2002年4月、医療体制の維持と施設の老朽化への対応に苦心していた彦島病院の経営が移譲され、㈳下関診療協会となった。08年3月、故・緒方幸光理事より『大きく根を張り、幹と枝を大きく伸ばす樹木のように日本の医療に大きく貢献する』という願望を込め、法人名を『巨樹の会』と命名。その後、佐賀県武雄市の武雄市民病院の移譲を受け、10年2月、新武雄病院を開院する。

 一方、関東において千葉県八千代市の八千代リハビリテーション病院(06年4月開院)を皮切りに、東京を中心に、埼玉、神奈川、千葉、栃木に年1施設のペースで回復期病院を開設。15年4月には、東京都渋谷区にあった旧・キリンビール本社ビルを改修し、日本最大規模の303床(現在332床)を有する原宿リハビリテーション病院を開設した。さらに今年10月には、東京都江東区に、206床を有する江東リハビリテーション病院を新たに開院。15年間で、関東地区を中心に15の急性期、回復期病院を展開することになった。

 下関リハビリテーション病院開業時は、わずか45床であった回復期の病床は、江東の新病院を含めてカマチグループ全体で日本最大数の2,779床。その運営に欠かせない2,521名のリハビリ職員数も、世界でも類を見ないトップレベルの規模である。

全国平均を上回る実績

 圧倒的なスピードで回復期病院を展開する巨樹の会。その活動の根本には、カマチグループ・蒲池会長が定義する「障害を受けた者を彼のなし得る最大の、身体的・精神的・社会的・経済的・職業的な能力を有するまでに回復させること」という、リハビリのコンセプトがある。わかりやすく言えば、リハビリは「家に帰すこと」が最大の目的だ。その成果は数字(【表Ⅰ】参照)からもはっきり見てとれる。巨樹の会の回復期病院では、患者1人あたりの1日単位数(リハビリの時間)、在宅復帰率ともに全国平均を大きく上回る。より細かい内容では、たとえば、入院時にオムツを使用している患者(1,973名)のうち、59.2%(1,169名)が退院時にオムツがなくても生活できるようになり、入院時に食事の経口摂取できない患者(442名)のうち、52.7%(233名)が経口摂取できるようになっている。

 桑木副理事長によると、回復期病院は大きく分けて、(1)急性期に付属した回復期、(2)回復期の専門病院、(3)療養病床に付属した回復期、(4)老健を所有する回復期に分類できるという。巨樹の会の病院は(1)か(2)に分類されるが、(3)と(4)のパターンだと、たとえば、療養病床や老健に空きが出ると、経営判断で回復期の患者でその空きを埋め、結果的に、リハビリの効率・効果を下げることになるケースが出てくる。この点において、「家に帰すこと」で勝負するカマチグループの考え方は一線を画す。原宿リハビリテーション病院では、リハビリテーション科だけではなく、内科(総合・神経・循環器)、外科(消化器・呼吸器・心臓・脳・整形)および歯科の常勤医を配置。多岐にわたる専門性を有しているのだ。

(つづく)
【山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:鶴崎 直邦
所在地:佐賀県武雄市武雄町大字富岡12628
設 立:1954年4月
正味財産合計:307億7,941万円
URL:http://www.kyojunokai.jp​

 
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