日本最大級!回復期病院の実績に見る独立独歩の事業展開(中)~巨樹の会
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一般社団法人 巨樹の会(カマチグループ)
最大の目的は「家に帰すこと」
では、実際にどのようなリハビリを行っているのか。まず、対象疾患となるのは、脳血管障害、運動器疾患(骨折など)、廃用症候群(寝たきりなど長期間身体を動かさないでいることで生じる、筋肉、関節、骨、精神などの障害)の3つ。巨樹の会では、急性期を経過した患者(ポストアキュート)の受け入れ、在宅復帰への踊り場と考えており、傷病を発症してから2カ月以内に回復期病院に入院し、入院初日から、2カ月ないし半年間、しっかりリハビリを行う。
そのはじめに、01年にWHO(世界保健機関)が採択した、ICF(国際生活機能分類、International Classification of Functioning, disability and Health)という基準に基づき、食事や運動、社会参加の能力も含めて生活機能と捉え、それを成し得ない個人の状況を分析。これに基づき、患者1人ひとりに必要な、以下のリハビリを実施していく。
PT(理学療法士)は、起立・歩行など、運動機能の回復を図る。たとえば、脳卒中で左半身がマヒした患者には理学療法士がついて歩行訓練を実施する。OT(作業療法士)は、PTが大きな動作を担当するのに対し、生活に結び付いた細かい動作を実地に基づいた訓練で改善する。たとえば、手の動きが悪い患者がものをつかむ練習や、足の筋肉が落ちた患者がお風呂に入る練習などを行う。
ST(言語聴覚士)は、脳卒中などによる言語障害・音声障害・聴覚障害、飲食物をうまく飲み込むことができない嚥下障害などに必要な訓練と援助を行う。また、高次脳機能障害では、ものを覚えることが苦手になるため、PT、OT、STなどのセラピストが一緒に買い物やバスの乗降、などさまざまな生活の局面に随行し、評価を行う。その結果、「必要なことを紙に書けばできる」といったことを家族に助言する。また、職場復帰も重要視しており、通勤での移動やパソコン操作を行うといった各種シミュレーションルームを用意。職場にセラピストが同行し、できること、できないことを確認して、職場への説明も行う。
このほか、病棟ADL(日常生活動作)訓練として、看護師、看護補助者が関わり、更衣、移動、整容、食事、排せつの5つの基本動作の訓練を実施。また、病気・入院による精神的孤立を防ぐため、離床活動(寝たきりの状態を脱すること)として、患者の趣味・趣向から、人と触れ合う機会(社会参加の入り口)をつくる。認知症の原因の1つは、社会参加の不足である。たとえば、脳卒中になると、血管性痴呆で物覚えが悪くなる。その進行を抑制するためにも社会参加が必要とされる。また、リハビリは、保険で認められるのが1日最大3時間(急性期だと1~2時間)。残りの21時間は、自主訓練がかなり重要となるため、巨樹の会では病棟における訓練や指導も徹底して行っている。
急性期から回復期へ
2000年に回復期の制度ができてから17年。今でこそ、「医療介護総合確保推進法」に基づき、地域医療構想が各都道府県単位で策定され、急性期病院単体で患者を診るのではなく、急性期、回復期、在宅、施設という流れで、それぞれの施設が得意分野を生かして“地域で診る”という流れができてきた。
しかし、そうした概念は、30年以上前からカマチグループには存在していた。国が早期リハビリの価値を認めず、診療報酬の点数もほとんど加算されなかった70年代から積極的にこれを実践してきたのだ。「リハビリに取り組むのは、カマチグループ創設の歴史に由来する」という桑木副理事長。その歴史とは、蒲池会長の医院開業に遡る。グループ創設者・蒲池会長は、1940年4月、福岡県八女郡黒木町生まれ。蒲池家は、江戸中期から医師を務めた家柄で、蒲池会長が9代目となる。59年、福岡県立修猷館高校を卒業。医師の道を志し、九州大学医学部に進学、65年に同大学を卒業した。人生の岐路に立ったのは33歳の時。九州大学病院第一外科を出た後、医療のあり方をめぐって医局と対立し、破門扱いとなる。74年、山口県下関市にカマチ医院を個人開業。学閥や医局のつながり色が強い医者の世界で、孤立することは致命的とも思えるが、蒲池会長は、「とにかく患者のために役に立つ医療を行わねばならない」という信念のもと、急患の「たらい回し」が当たり前のように存在していた時代に、「救急(急性期)をどう行うか」ということから始めた。
当時、救急に対応する急性期病院はとても重宝され、カマチ医院19床の診療機能では、患者を次々と退院させないといけなくなった。「中途半端な治療で患者を退院させ、その後、寝たきりになっては意味がない。その時、当時18歳だったセラピストの山崎嘉忠君が、治療後すぐに適切なリハビリを行えば、回復が早いことを実例で示してくれた」(蒲池会長)。蒲池会長は、積極的にリハビリを取り入れるようになり、これが現在の巨樹の会へと続いている。山崎氏は、下関リハビリテーション病院で初代事務局長を務め、グループで介護事業を行う(株)シダーの創業者となった。
なお、急性期病院では、九州で福岡市東区の福岡和白病院(池友会)、関東で埼玉県久喜市の新久喜総合病院(巨樹の会)が、グループの急性期の柱として運営されている。それぞれ救急車の受け入れ台数は年間6,000台以上。地域の基幹病院として貢献している。
(つづく)
【山下 康太】<COMPANY INFORMATION>
代 表:鶴崎 直邦
所在地:佐賀県武雄市武雄町大字富岡12628
設 立:1954年4月
正味財産合計:307億7,941万円
URL:http://www.kyojunokai.jp関連キーワード
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