「危機対応融資制度」を悪用~商工中金の不正融資を検証する(前)
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昨年10月、政府系金融機関の一つである(株)商工組合中央金庫(以下、商工中金)の鹿児島支店が不正融資をしていることが発覚。これを受けて同年11月、商工中金は不正融資があったことを認め、外部の弁護士などの第三者委員会による調査を開始。4月25日にその報告書が公表され不正融資問題大きく取り上げられることになったのだ。
不正融資が始まるきっかけについて
2011(平成23)年3月11日(金曜日)14時46分18秒、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmを震源とする「東日本大震災」が発生。これにともない福島第一原子力発電所事故も発生し、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。1995年の「阪神・淡路大震災」、2004年の「中越地震」以来、観測史上3回目の最大震度7を観測。地震の規模を示すマグニチュードは9.0で、日本の観測史上最大規模の地震だったいわれている。
◆【表1】を見ていただきたい。商工中金が不正融資への道を進むことになった時系列表である。
この表から見えるもの
・商工中金は2011年3月11日に発生した東日本大震災からわずか3日後の3月14日、単独で「災害復旧資金」の取り扱いを開始。
・第一次補正予算が成立すると、8月24日から東日本大震災に係る「中小企業災害復旧資金利子補給制度」を積極的に活用。
◆政府は第三次補正予算を成立させ、東日本大震災により業績が悪化した中小企業が融資の対象となる東日本大震災復興特別貸付として「危機対応融資制度」を創設。
商工中金はその活動が認められ、【表2】の通り「東日本大震災復興特別貸付」を同年12月12日から取扱いを開始。ほぼ独占的に取り扱いできる体制を築いた。
【表2】東日本大震災復興特別貸付について
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・これにより東日本の支店を中心に貸出目標のノルマが設定され、それが不正融資の引き金となったのだ。
被災地から遠く離れた池袋支店が110件の不正融資。被災地の東北地方に支店・営業所を出店している都内の中小企業へ不正融資を積極的に勧誘していた実態が浮かび上がる。・内部監査により中小企業庁に不正融資を報告したが、杉山秀次社長以下経営陣は変節し「問題無い」と再報告。中小企業庁も「問題なし」と判断。さらに2015年12月~16年6月までの7カ月間に及ぶ立ち入り検査でも「不正はない」と判定。
◆【表3】は商工中金の歴代トップの経歴である。まさに「官と官の癒着構造」そのものといえよう。お墨付きをもらった商工中金が組織ぐるみで不正融資に走るきっかけを創った中小企業庁の監督不行き届きの責任は重いものがある。しかしその後に発生した熊本地震に対する「危機対応融資制度」によって、その不正融資の実態が明らかにされることになるのだ。
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(つづく)
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