第2のタカタになるか 神戸製鋼・闇の事件史(前)
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(株)神戸製鋼所の製品データの改ざん不正問題は底なし沼の様相を見せてきた。巨額の損害賠償、取引停止が現実味を増してきたのだ。欠陥エアバッグのリコール問題で倒産したタカタの二の舞になりかねない事態だ。神鋼はスキャンダルの宝庫だった。1970年代以降に就任した社長が立て続けに総会屋事件や政治資金規正法事件違反で後に引責辞任するなど、この会社の不祥事体質は根が深い。1997年には、 (株)第一勧業銀行と野村證券(株)の総会屋利益供与事件が起きた。この事件の淵源は神鋼の内紛にあった。
総会屋の呪縛が解けなかった
第一勧業銀行相談役の宮崎邦次氏(元頭取・会長)は、97年6月29日、自宅書斎の書棚にビニール紐をかけ、首を吊って自殺した。享年67歳。
供述を渋っていた総会屋の小池隆一氏は、拘置所で宮崎氏自殺の報に接し号泣。その後は、素直に取り調べに応じるようになったという。
97年、野村證券の元社員の内部告発から発覚した利益供与事件は、金融界を揺るがす大スキャンダルに発展した。野村證券が小池氏に特別口座を開き、利益を供与する一方、小池氏は野村の株を30万株も持っていた。世間が驚いたのは、その買い付け原資を、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)がすべて融資していたこと。小池氏の口座には第一勧銀から270億円が流れ込んでいた。大企業が隠していた「パンドラの箱」が開かれたのだ。
小池氏は、総会屋としては決して大物ではない。なぜ、第一勧銀は巨額なカネを出したのか。
「総会屋の元出版社社長の呪縛が解けなかった」。第一勧銀の近藤克彦頭取は、こう語った。元出版社社長とは木島力也氏。木島氏の子分が小池隆一氏である。木島氏が93年に亡くなった後、小池氏が第一勧銀の利権を引き継いだ。第一勧銀が呪縛にかかったのは、木島氏に対してではなかった。木島氏のバックにいる右翼の巨魁、児玉誉士夫氏の影に怯えて呪縛が解けなかった。児玉氏の名前を最大限に利用した木島氏は、児玉氏と最も親密な関係にあった町田久之氏(広域暴力団・東声会)の存在をにおわせて、第一勧銀の経営陣を金縛りにした。
第一勧銀が木島氏と腐れ縁ができたのは、神戸製鋼のお家騒動だった。神鋼の内紛に右翼の大物、児玉誉士夫が介入
神戸製鋼は戦前の大商社・鈴木商店に源流を持つ1905年創業の名門企業。1965年、神戸製鋼は尼崎製鉄(尼鉄)を吸収合併した。合併4年後の69年から70年にかけて、神鋼社長の外島健吉氏と尼鉄社長の曽我野秀雄氏が対立。曽我野氏は政財界の黒幕・児玉誉士夫氏のもとに駆け込んだ。経営者は児玉氏の名前を聞いただけで震えあがったが、その一方で、揉めごとの解決に児玉氏の力を借りた。
児玉氏は、外島氏追い落しに力を貸すことを約束したが、途中で外島氏側に寝返った。その際に児玉氏が示した調停案が「曽我野は辞めさせる、辞め賃を払ってやれ」というもの。
“辞め賃”を捻り出すために使われたのが、児玉氏の盟友、元広域暴力団東声会会長・町井久之氏の会社、東亜相互企業が所有する福島県の那須白河高原の土地。時価5億円の土地を神鋼は32億円で買い上げた。東京地検特捜部は、神鋼の内紛につけ込んだ悪質な恐喝事件とみて、神鋼東京本社の総務部長を参考人として呼んで事情聴取を求めたところ、その総務部長氏は「警視庁を一歩出たら、体に穴が開くかもしれない」と証言を拒否したという。
神鋼の内紛劇で、児玉氏の手足となって、働いたのが総会屋の木島力也氏。白昼堂々、本社に乗り込んだ。行きも帰りも、本社の社員は廊下に整列して、最敬礼させられた。以後、神鋼の株主総会は木島氏が仕切ることになる。【森村 和男】
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