【2017衆院選・福岡2区】大激戦の背景、鬼木・稲富、両氏ともに国政へ!
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22日投開票が行われた衆院選 福岡2区は、自民党公認の鬼木誠氏(45)が10万9,098票を獲得し、3期目の当選を決めた。3度目の対決にして「3度目の正直」とはいかなかった希望の党公認の・稲富修二氏(47)は10万938票、8,160票差で惜しくもおよばなかった。投票率は53.5%(国内・在外合計)、前回比6.5ポイント増。23万2,400人が投票を行った。
序盤から危機感を全面に
「出遅れた選挙戦、ここから巻き返す」。10日公示日の第一声で鬼木氏は強い危機感を示した。今回、希望の党の公認を得て立候補した稲富氏とは3度目の対決。過去2回、鬼木氏が勝利したが、その得票率の差は、15.4ポイントから9.1ポイントへと縮まっていた。国会議員の活動で鬼木氏が地元を離れる間、稲富氏は毎朝の辻立ち、トイレ清掃、PTA活動など地域密着の姿勢で、政党ではなく稲富氏自身への支持を高めていた。新党・希望への注目の高さもあり、大方の観測は「稲富氏リード」だった。
選挙を取り巻く環境も鬼木氏に不利に働いたという。今回の衆院選から適用された公職選挙法改正による区割り変更で、城南区と南区の一部が他の選挙区とされたが、「変更のあった南区の地域には、妻の実家があり、親戚などすぐ顔が浮かぶ支持者が減ったことが大きい。城南区では、2つの選挙区に割かれた地域を地盤とする福岡市議の力は2つの自民候補の応援で削がれた」(鬼木氏)という。開票結果は、南区は稲富氏が1,439票リードし、城南区は僅差。中央区で鬼木氏が稲富氏に9,267票の差をつけて挽回した。
以上の状況から、序盤から“危機感”を全面に打ち出した鬼木陣営。「鬼木が危ない!!」。かつて所属していた福岡青年会議所の仲間たちが駆けつけた。福岡県連は福岡2区を「最重点選挙区」に指定。「あとは2区のみ!」。県内の地方議員を結集し、総力戦で小選挙区全勝を目指した。福岡県の2区と10区以外の選挙区では、自民党候補が優勢。戦力を集中できる条件が整っていた。選挙対策本部長の山崎拓自民党副総裁は、選挙区内の45校区で演説会を開くよう指示。地方議員の協力のもと、鬼木氏は愚直にやり遂げた。
封印された「希望」
小池百合子代表の「排除」発言や東京都議の造反などで、「強い女性」から「傲岸不遜な女帝」へと有権者が抱くイメージが変わり、希望の党は失速。「希望で入ってきた人もいれば、出ていく人もいた」(稲富陣営関係者)。連日、ネットやメディアを賑わす小池バッシングのなか、政策に関する問い合せが増加。何より痛いのは、野党共闘がご破算となり、「希望カラーはマイナス」と判断した稲富陣営は、政党を前面に出さない選挙戦を展開。「支持を集め、個人の力をつけなければ国政では何もできない」「(政党は)私が変えてみせる」(稲富氏)。
選挙カーやのぼりなどには、「希望の党」の表示はない。ビラやポスターに小さく同党のロゴが印字されているだけで、一見すると無所属候補。連合福岡など支持団体の代表は、「(稲富氏の)人物、政策を支持する」と強調する。旧民主党時代から続く、所属政党への逆風のなかで積み重ねてきた個人票。今回は、希望・小池への逆風にさらされた。稲富陣営のキーワードは「あと70票」。前回の衆院選で、70票足らずで比例復活を逃したからである。「1票の重みを痛いほど知った」。稲富陣営の危機感もまた、相手陣営に劣らず強かった。
国政という同じステージへ
一進一退の攻防。「今度は鬼木に」「次は稲富を勝たせて」。両陣営の票の奪い合いは、ひっくり返しあいのオセロゲームへ。結果がまったく読めない大接戦となった。開票所のミスもあり、鬼木氏の当選が確実なものとなったのは深夜遅く。支援した地方議員の叱咤激励を受けて、鬼木氏は、「国民のために働くことが国会議員の本分と思い、環境大臣政務官や国会対策委員で地元を離れていることが多かった」「慢心なく、謙虚に、丁寧に取り組みたい。地域のケアをしっかりやっていく」などと今回の苦戦を反省。今後は、後援会組織の拡充を図っていくとしている。
一方、稲富氏は、九州比例ブロックで復活当選。比例名簿で単独1位の1議席を除く、3議席をめぐって惜敗率※90%台で4人が争う大混戦となった。ある鬼木陣営関係者は、「稲富氏が復活当選すれば、今度は国会議員という同じステージに立つ。同じ条件下で、どれほど地元の声を国政に届けられるかが次の勝負のポイントになる」と、脅威になった稲富氏の復活当選を内心安堵する。「環境に左右されず、自分の力で当選できるかどうかが大事」という稲富氏。両氏にとって、国政における活動を地元にしっかり伝えていくこともポイントとなる。
【山下 康太】
●福岡2区 開票結果
鬼木 誠(45) 自民・前 10万9,098票 当選
稲富 修二(47) 希望・元 10万938票 比例復活
松尾 律子(45) 共産・新 1万7,594票<プロフィール>
■鬼木 誠(おにき まこと)
1972年10月生まれ、福岡市出身。95年、九州大学法学部を卒業し、西日本銀行(現・西日本シティ銀行)入社。同行退社後、03年4月の福岡県議会議員選挙で初当選。福岡市中央区選出の県議を3期9年7カ月間務めた後、12年12月、衆院選(福岡2区)で初当選。14年12月に再選し、15年10月から16年8月まで環境大臣政務官を務めた。■稲富 修二(いなとみ しゅうじ)
1970年8月生まれ、福岡県大野城市出身。95年、東京大学法学部を卒業し、丸紅㈱に入社。96年に退社し、松下政経塾に入塾(17期生)。02年、米国コロンビア大学公共政策大学院を修了。09年8月の衆院選では民主党公認で初当選。12年12月、14年12月と2度続けて、衆院選に落選。5年間の浪人生活を余儀なくされた。関連記事
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