2024年12月23日( 月 )

【緊急寄稿】建設業界と行政機関、総ぐるみの偽装問題(4)

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協同組合 建築構造調査機構 理事長 仲盛 昭二 氏

意味のない行政庁のお墨付き

 耐震偽装問題が発生した当時、多くの建物の構造検証が行われ、行政庁が安全を確認し、建物所有者に対して、安全を確認した通知を交付しています。今回私が問題提起した「不正な設計の事実」と、行政庁による安全確認との間に大きな矛盾が生じています。不正な設計により安全を確認できない建物に対して、「構造検証を踏まえて安全を確認した通知を交付した事実」を、行政庁は、どう説明できるのでしょうか?

 設計事務所による不正な設計や、行政庁による不適切な建築確認により、建物の所有者は、「安全を確認できない建物」を所有しているという状態になっているのです。
 この状態では、建設や購入に要した金額通りの価値がないと考えざるを得ないので、中古売買の際の重要事項説明にも影響を与え、大きな問題が生じます。分譲マンションの住宅ローンの前提となる建物の価値が低く評価されれば、ローン自体が成立しません。金融機関の提携ローンであれば、実際の価値よりも高いローンを設定した金融機関の責任も問われます。「抗弁権の接続」と言われるもので、提携ローンを設定した金融機関にも販売業者と同等の責任があり、求償可能というものです。

 マンションだけでなく、ホテルにおいても同様の不正な設計は行われています。

 これらの問題は、分譲業者や設計事務所に対する損害賠償などの裁判云々という問題とは別次元のことですが、建物の所有者にとっては理不尽極まりない問題です。行政まで含めた大きな問題として、当然、国も巻き込み、安全対策等を検討すべきです。国は、国土強靭化計画を打ち出し、耐震性の低い建物の建て替えや耐震改修を進めていますが、不正な設計の問題を解決しなければ、強靭化計画と逆行することになります。

横行する手抜き工事

行政庁の責任を追及する住民たち

 不正な設計の問題とは異なりますが、前述した久留米の分譲マンション「新生マンション花畑西」における裁判では、SRC造の不正な設計に加え、施工業者(鹿島建設)が、図面に明記された梁を30カ所も意図的に施工しなかった上、鉄筋のかぶり厚さがゼロなど法令の基準を満たしていない箇所が無数にある(なかには鉄筋が露出し、腐食が進んで箇所も数多く判明)ことが判明しました。
これらの施工ミスは、鹿島建設自らの調査により判明し、鹿島建設自身も、これらの施工の不具合に関して、下請け業者に損害賠償を請求していました。これほどの施工ミスを自覚していながら、鹿島建設は、区分所有者から損害賠償を求められた裁判においては開き直った態度を示しています。これは、裁判上の戦術かもしれませんが、鹿島建設が手抜き工事を行ったこと、手抜き工事について開き直ったという事実は動きません。こういった大企業の体質が、最近の自動車や鉄鋼における不正問題にも共通している体質であると思わざるを得ません。

 私がこの文書で提起した問題は、ビルやホテルの所有者の経営状況や、マンションの区分所有者の人生をも左右しかねない重大な問題です。構造計算において余力がある場合は、再検証により、安全を確認できる場合もあると推察されるので、所有者自らが、積極的に、設計事務所や行政庁に対して、建物の安全を確認するよう、働きかけられることを提案いたします。

(了)

▼関連リンク
・どうなる?久留米・欠陥マンション裁判(1)

 
(3)

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