2024年12月21日( 土 )

【屋台問題】福岡市職員がネット監視、批判的な呟きを「誤認」と断定(1)

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 「市の信頼を失墜させた」などとして、福岡市の屋台を題材にした民放のドキュメンタリー番組について抗議を行った福岡市。信頼失墜の証拠としたのは、インターネットの書き込み計108件。それら市井の声をかき集めたのは市職員である。ネット上の発言をチェックし、問題性があると判断すれば、何らかの措置をとる。中国共産党政府が行っているようなネット監視が、日本の地方自治体でも行われていた。自分にとって不都合な報道には、なりふり構わず、対抗措置に打って出る高島市政ならではの行いである。

高島市政に反省の色なし

大量に出現した選定委員会関連の「のり弁」

 多くのファンに惜しまれながら、数々の名店が廃業を余儀なくされた福岡市の屋台公募。屋台営業を行う道路などの占用許可を第三者に譲渡するなどした、いわゆる「名義貸し」の屋台28軒の枠で、福岡市が事業者を公募したのは昨年10月。選定は、有識者、企業経営者、市議会議員、屋台組合関係者からなる選定委員会が行い、書類による1次審査と面接による2次審査をもとに選考された。飲食店の事業者をペーパーテストと面接だけで判断すること自体、疑問を抱かずにはいられない。

 そのプロセスでは、選定委員による情報漏えい問題が発生したほか、不透明な公募場所の決定など数々の問題点が明らかになった。市ホームページに掲載された選定委員会の議事録は、非公開部分の分量がわからないように細工され、文書では、応募者の採点表など過度とも思えるほど真っ黒に塗りつくされた状態(通称「のり弁」)になったものが開示された。また、情報公開のミスを「条例の内容を知らなかった」と言い訳にならない言い訳を平気でうそぶく、屋台担当のにぎわい振興課長は、取材のみならず、屋台営業者への対応でも横柄な態度をとる「トラブルメーカー」。そのうえ、1次審査の関連資料が、選定委員から応募者に漏えいする問題が発生。審査のやり直しが行われるなど、異常事態に陥った。

 こうした一連の経緯を振り返れば、福岡市の屋台行政が、とうてい真っ当であるとは言い難い。屋台営業者のみならず、各種報道で異常事態を知った屋台ファンや福岡市民からは、多くの怒りや疑問の声があがり、弊社にも数多く寄せられた。しかし、この問題を起こした高島市政には、反省の色など皆無のようだ。

 福岡市への情報公開で、福岡市の屋台に密着取材したフジテレビのドキュメンタリー番組について、福岡市が「放送倫理上、非常に問題ある番組」「本市の屋台行政に対して著しい誤解を生じさせ、その信頼を失墜(させた)」などとして、8月4日付で放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会に審議・審理の申立てを行っていたことがわかった。BPOとは、NHKと民間放送局206社で構成される日本民間放送連盟によって設置された放送への苦情や放送倫理の問題に対応する第三者機関。視聴者などから問題があると指摘された番組・放送について討議を行い、「放送倫理上問題がある」と指摘された番組は「審議」、「内容の一部に虚偽がある」と指摘された番組は「審理」として問題点について調査・検証を行う。なお、討議の結果、問題性が認められず、「審議」または「審理」にならない場合もある。

 さらに、申立てには「誤認」として、同番組に関するSNS(ツイッター)上の書き込み108件を添付。福岡市職員による“ネット監視”が行われている実態も明らかになったのである。

(つづく)
【山下 康太】

 
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