耐震性に疑問、豊洲市場の黙殺された致命的な問題(1)
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市場の安全安心に関わる問題
東京都の築地市場から豊洲新市場への移転は来年(2018年)10月中旬と、新市場建設協議会は決定しました。豊洲市場に関しては、土壌汚染の問題や、市場の機能を無視した設計などが問題となっていましたが、私は構造設計者の立場から、日本最大手の設計事務所である日建設計による「不正な構造設計」という建物の基本的な安全性に関わる問題について、以前から警鐘を鳴らし続けてきました。
※参照(【緊急寄稿】建設業界と行政機関、総ぐるみの偽装問題(1) )今回は、「NetIB-NEWS」を運営する(株)データ・マックスによる取材を踏まえ、私が指摘し続けてきた問題点と、これに対する設計事務所の日建設計、東京都などの無責任な対応について明らかにしていきます。
私が指摘した内容の1つ目は、豊洲市場の設計が建築基準法施行令第82条の2(※1)に定められた層間変形角の基準を下回っていたことです。これは明確な法令違反です。
次に、鉄骨鉄筋コンクリート造である水産仲卸売場棟の1階柱脚(柱の根元部分)は非埋め込み形であるため、保有水平耐力計算(いわゆる耐震強度を求める計算)の係数を鉄筋コンクリート造の係数(こちらの方が厳しい)を採用しなければなりませんが、日建設計による構造計算では、鉄骨鉄筋コンクリート造の低減された係数が採用されています。これは、保有水平耐力計算について定められている建築基準法施行令第82条の3(※2)、建設省告示(昭和55年)第1792号(※3)に違反し、適切な方法により保有水平耐力計算が行われていない設計です。結果的に建物の耐震強度不足を招いています。
(※1)建築基準法施行令第82条の2 建築物の地上部分については、(中略)各階に生ずる水平方向の層間変位を国土交通大臣が定める方法により計算し、当該層間変位の当該各階の高さに対する割合(層間変形角)が二百分の一(中略)以内であることを確かめなければならない。
(※2)建設省告示(昭和55年)第1792号の意義
=構造別にDs値の算定方法を規定。鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート造よりもDs値を0.05低減した値となっている。すなわち、鉄筋コンクリート造としてDs値を算定する場合には低減は適用できないということである。(※3)建築基準法施行令第82条の3 建築物の地上部分については、第一号の規定によって計算した各階の水平力に対する耐力(保有水平耐力)が、第二号の規定によって計算した必要保有水平耐力以上であることを確かめなければならない。
うしろめたさを感じさせる取材対応
豊洲市場の設計を担当した日建設計は、データ・マックス社からの質問に対し、「層間変形角が建築基準法施行令第82条の2に違反」、「Ds値の不正な低減」、「Ds値の不正な低減による強度不足」、「ピン柱脚の鉄量不足」、「検査済証の交付と設計内容のチェック」に対し、下記の回答を示しました。
【日建設計 広報室の回答】
ご質問について回答します。豊洲市場の建物の安全性については、市場問題プロジェクトチームにて確認済みです。下記のリンクをご参照ください。
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt-index.html
よろしくお願いいたします。株式会社日建設計 広報室
日建設計の回答に示されたリンクを開くと、市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)の開催概要のページが表示されます。「このなかから勝手に見てください」ということなのでしょうが、「第何回の会議なのか」、「どこに掲載されているのか」、何1つ具体的に示されていない不誠実極まりない回答です。サイトのURLを示すのではなく、質問に対して適切に回答をすることが、常識的な対応だと思いますが、常識的な対応をできないということは、うしろめたさの表れに違いありません。
(つづく)
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