福岡市立A中学校、異常に難しい定期テストの裏事情~矛盾する教育委員会の見解(後)
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A中学校の校区には、医師や研究者、企業オーナーなどが多く住む「高級」住宅地が含まれるため、自ずと教育に力を入れる家庭の子どもたちが入学してくる。
子どもたちの平均学力は中学校に入学してくる時点でかなり高い。入学する生徒のうち何割かは、県内外の私立・国立中学に合格しながら、県内公立最難関の名門S高校を目指すためにA中学を選んだ子どもたちだ。中2になると私立中学を退学して転入してくる生徒が増えるが、それもS高校を受験するためだという。A中学校では16日まで2学期の期末テストが行われていた。生徒たちに影響が及ばぬよう、テストが終わるのを待ってA中学校に取材を申し込んだ。
A中学校校長によると、自校のテスト内容については「むしろ、『簡単すぎる』という意見もいただいている」として、「さまざまな方のご意見を聞きながら」テストを作成しているという。ところで、読者の方から本連載についてメールでご意見をいただいた。内容はA中学校の教育方針を評価したうえで、連載を「A中学校に対する批判」と受けとめて非難したものだった。
実は記者は、A中学校の教職員に問題があるとはまったく考えていない。取材を進めるなかで何人かのA中学校保護者に話を聞いたが、概ね指導内容に満足しており、「ここまで鍛えてくれる中学校は他にない」と言い切る保護者もいたくらいだ。
おそらくA中学校のほとんどの教職員たちは、子どもたちの努力とそして結果を正確に評価しようと知恵を絞っているはずだ。県内の一部中学校のような学級崩壊や校内暴力もない、ある意味平穏な学校生活のなかで、できればじっくりゆっくりと、学力を含めた「生きる力」を養いたいと願っているに違いない。地域事情からいびつなテスト内容になっているとしても、それは教育委員会のチェック機能が働く余地がないという制度上の問題であり、決してテストをつくる教職員の問題ではない。そのことは確認しておきたい。しかし、それを踏まえたうえで、「通っている中学校によって評定に違いが出たり高校受験で有利・不利が生まれることがあってはならない」とも思うのだ。
あまりにも身近な存在がゆえに、公立学校の運営方針については「正しいはずだ」という、希望もこめた推定が働いてしまう。しかし運動会で行われてきた組体操の危険性が、専門家に指摘されて近年初めて認識され始めたように、長く続いていることが必ずしも正しいとは限らない。福岡市内のどこに住んでいても同レベルの教育を受けられるのが大前提であり、公立中学校に与えられた使命でもある。教育委員会は管轄の中学校で行われている定期テストの内容や実施方法を含めて、正確に把握すべきだ。
受験シーズン真っただ中。子どもたちは彼らなりに「人生を賭けて」、大きな試練(高校受験)に挑もうとしている。おとなたちができるのは、可能な限り公平公正な場を与えること、そして適正な評価で努力に報いてあげることではないだろうか。A中学校の校長は、定期テストがどのような過程を経て作成されているかについて、「外部の方にはお答えできない」としたものの、「保護者の方からの問い合わせであれば」答えるとしている。中学生の子どもをもつご家庭はぜひ、それぞれの中学校に問い合わせてみてはいかがだろう。まずは関心をもつことだ。
(了)
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