頻発する公金詐欺に思う なぜ見抜けないのか
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一度でも助成金活用を検討したことのある企業経営者ならおわかりだろうが、一口に「助成金」と言っても、おびただしい数の種類がある。専門家でさえ、存在するすべての助成金を把握するのは難しいほどだ。
ただし、いずれも共通するのは、困っている人、企業、団体を助けるためという目的だ。12月5日に発覚したスーパーコンピュータ開発会社「PEZY computing」による巨額助成金詐欺事件。逮捕された代表者の関連会社が受給した助成金・融資の総額は100億円を超えるという。同社が助成を受けていたのは、研究開発資金の調達に苦労するベンチャー企業に対し、先端技術の実用化に向けた開発を支援する助成制度だ。助成金によって、ベンチャー企業が新技術を実用化できる効果があるのは、疑いようがない事実。これまでに同様の助成金を活用し、日の目を見た商品やサービスが存在するのは間違いないところだ。
人材系の助成金でいえば、雇用調整助成金というものもある。景気変動の影響で、一時的に業績が悪化した中小企業に対し、従業員を休業させたり、教育訓練を実施したりした場合に助成を行うというもの。制度利用によって、救われた中小企業も多いなか、データ改ざんによる架空請求で法人が摘発されるケースも目立つ。
数百万から億単位まで、額面はさまざまだが、公金は公金だ。不正受給は許されるものではない。しかし、不正受給が後を絶たない状況で、受け付ける公的機関はなぜ不正が見抜けないのかという疑問も生じる。
受給に必要な要件を満たしているのか否かの確認は書面主義だ。これだけ不正が発覚すれば、審査は厳格化する。一部で現地への立ち入り調査などの防止策も講じられているが、多くは申請されただけで、受給の可否を判断する。申請数が多い助成金ほど、その傾向は強いはずだ。現場に踏み込みさえすれば、要件を満たしているかはっきりするものもあるが、現場を調査するマンパワーが足りないのだ。
福岡県内の障がい者福祉事業所で、昨年末に発覚した組織的な不正受給も例外ではない。調査の結果、実態が確認できない事業所が一斉に摘発された。開業前の立ち入り調査はあるものの、自治体からの指定を受け開業してしまえば、問題のない限り、数年に一度の現地調査に留まっている。事件発覚後、抜き打ち検査が導入されているとはいうものの、増加する事業所すべてに目を光らせることはできていないのが現実だ。
「立ち入り調査すれば、すぐに不正は見抜ける。でも役所はそこまで手が回らない」――ある福祉事業者の一言が重くのしかかる。役所のチェック体制の甘さが不正受給の温床だと切り捨ててしまうのは簡単だが、役所のマンパワーにも限界がある。抜本的な対策を講じない限り、いたちごっこは終わりそうにない。
【東城 洋平】
※12月19日に配信された同記事の内容につきまして、事実誤認がありました。訂正のうえ、再掲載させていただきます。
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