2024年11月25日( 月 )

「基地隠し」で生まれた名護市・新市長~民意は反映されたのか(前)

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 沖縄県名護市長選は、政府が実現を急ぐ米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題が大きな争点となり、全国的な注目を集めた。2月4日に行われた投開票では、基地容認派の渡具知武豊氏が勝利。自公政権の総力をあげた支援体制で手にした勝利だがしかし、渡具知氏に市長として辺野古移設手続きを進める資格があるのかは疑問だ。渡具知氏は選挙期間中、いっさい基地問題に触れることがなかった。

稲嶺進氏の敗北

選挙期間中、路地に捨てられていた稲嶺氏の宣伝物

 2月4日に投開票が行われた沖縄県名護市の市長選挙は、新人で元市議の渡具知武豊候補=自民・公明・維新推薦=が初当選した。現職の稲嶺進氏(72)=社民・共産・社大・自由・民進推薦=は3,458票差で敗れ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止を訴え続けた革新市政は、2期8年間で幕を降ろすことになった。

 渡具知氏は名護市出身の56歳、第一経済大学(福岡県)を経て市商工会青年部、名護市議会議員などを歴任した。選挙戦期間中、稲嶺氏が「反基地」を鮮明に打ち出し、さらに米軍再編交付金に頼らずに市財政を改善させた実績などを訴えたのに対し、渡具知氏は若さと政権与党とのパイプをアピール。渡具知氏は、最大の争点とみられていた米軍普天間飛行場(宜野湾市)の同市辺野古への移設の是非については発言を控え、米軍再編交付金を活用して暮らしと生活向上に予算を振り分けようと訴えた。さらに、稲嶺氏が公約としてきた「パンダによる観光客誘致」については「荒唐無稽」と切って捨て、生活者目線での経済再生を公約の柱にしていた。

自公総がかりで渡具知氏を後押し

渡具知氏と、小泉進次郎氏

 選挙期間中、自民党本部は渡具知陣営の応援部隊として党の大物幹部を連日派遣して必勝態勢を敷いた。昨年12月には早くも菅義偉官房長官が来沖して経済振興策を約束、1月に二階俊博幹事長、萩生田光一幹事長代行らが名護市入りして渡具知氏支援を訴えている。さらに1月28日の告示日には元タレントで知名度のある三原じゅん子参議院議員が名護市入り、選挙戦中盤の1月31日と投票日前日の2月3日には同党選挙応援の「切り札」、小泉進次郎筆頭副幹事長を送り込んで総力戦を展開した。

 渡具知陣営はさらに公明党の推薦も得て、組織票を固める戦術をとった。「平和の党」を党是とする公明党は、党中央が自民党との共依存ともいえる蜜月関係を築いているのに対し、沖縄県本部は基地を抱える地元民意との間で板挟みになってきた。普天間飛行場の県外・国外移設を掲げる党県本部は、前回2014年の名護市長選では辺野古新基地についての政策不一致から自主投票を決定している。

 態度の定まらない公明党県本部を渡具知氏支持に転回させたのは、菅官房長官だった。昨年10月の衆院選で自民支持層に比例区で公明に投票することを徹底、衆院選における名護市内の比例公明票を前回より約2,000票増やし、公明県本部に「恩を売る」ことに成功した。こうした周到な根回しが、公明党県本部の渡具知氏推薦につながったとみられる。

 蓋をあけてみれば、渡具知氏は約3,500票の大差をつけて稲嶺氏に勝利、この票差は2,000票~2,500票といわれる名護市内の公明票とほぼ重なり、公明党の動向が名護市長選に大きな影響を与えたことを証明する結果となった。

(つづく)

 
(中)

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