天国と地獄~黒を白にする楽しみ
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2代目を継いで25年になる、地場ゼネコン経営者の高井氏が振り返る。「社長就任してからの20年間は地獄でした。赤字だと正直に申告できません。だからやむをえず赤字隠しの決算操作をしてきました」と苦しんだ時期があったことを告白する。社長就任から10年を過ぎると、経営者としての実力も積んでいった。業績も進展してくる。ところがだ。耐震構造問題で徹底的に叩かれ、厳しい環境に落ち込んだ。そして2008年のリーマン・ショックの洗礼を受ける。
ここから5年間は再び地獄に追いやられた。それでも住宅投資が活発化し、公共事業の増加も手伝って、急ピッチで業績回復した。何よりも人手不足から工事単価が高騰したことで、収益が改善したのである。3年前には完全に負の資産を一掃できた。局面が激変したのだ。逆に、「黒を白にすることが求められる」という局面転換になったのだ。黒=儲けを隠して、白(赤字)にすることが求められるのである。
高井氏が嬉々として語る。「赤字の時代には必死で知恵を絞って、小賢しい赤字隠しの策を打ちました。情けない気持ちを抱いていた記憶がいまだに鮮明に残っています。ところがこの3年間、様変わりしました。黒がたくさんでますから、正直に申告すると莫大な税金を納める事態になります。そこで必死になって節税できる道を探り、専門家たちの知恵を活用してきました。本当に楽しいですね。赤隠しは地獄、黒を白にする操作はまさしく天国という気分です」。
高井氏の話は発展する。「同業者ばかりでなく下請けさんたちも潤っていますから、業界全体はハッピーです。ただ心配なのはこの好景気がいつまで持続するかが一抹の不安として残ります」とのこと。「いやー間違いなく近い将来、受注難の衝撃は訪れます。しかし、心配ご無用!昔みたいに資金繰りが詰まって倒産する可能性は少ないでしょう。皆さま、それぞれに廃業を決断できるだけの蓄えはできています」という話であった。
(登場する人物はすべて仮名です)
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