こうして会社は乗っ取られた(1)~これが偽造された辞任届だ!
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福岡市博多区の産廃処分場で起きた法人乗っ取り劇。処分場を運営する法人とその関連会社において、計画を企てる一部の役員が結託し、代表者や株主の知らぬところで、取締役会や株主総会を開催していた。意に反する者を排除するため、数々の違法行為が行われた疑いがある。
「法人登記を確認し、初めて私が辞任したことになっていることに気付いた」――そう語るのは、会社を乗っ取られたと訴える人物だ。自分の知らぬところで、身の覚えのない届け出が誰かの手によって、公的機関に提出されていた。ゾッとする話だが、現実に起きたことである。
福岡市から許可を受け、金隈産廃処分場を運営するのが(株)和幸商会。処分場の土地所有者は(株)クリーン金隈である。前述の人物が和幸商会の取締役で、クリーン金隈の代表取締役も兼ねる吉岡直之氏だ。吉岡氏を震撼させた「乗っ取り」の真相がこれだ。
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会社謄本が示すように、吉岡氏は和幸商会の取締役を2018年1月11日に、クリーン金隈の代表取締役を2018年2月6日に辞任したことになっている。しかし、吉岡氏はまったく身に覚えがないという。辞任届を出した覚えもなければ、取締役会の開催も一切聞いておらず、まさに「寝耳に水」。吉岡氏は何かの間違いかと思い、和幸商会の箭内代表取締役・ナンバー2の伊藤監査役に状況を聞いた。返ってきた言葉に「乗っ取り」を確信したという。
「あなたはもう居なくなる予定だったから、関係ないでしょう」
吉岡氏は抗議したが、受け入れられなかった。そして、すぐさま登記関連の書類を確認した。出てきたのは、自身で作成した覚えのない「吉岡直之」取締役の辞任届2通だった。
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そこで、年末年始にかけ、箭内氏らに告げられたことを思い出した。
「市役所から連絡があり、手続きに必要なので、住民票を送ってほしい」
社内の人間から、こういうメールが来れば、素直に従ってしまうものだ。吉岡氏はこのときは「乗っ取り」の準備だとは思いもしなかったという。市役所からの要請と言われれば、提出しないわけにはいかない。吉岡氏は2度続けて求められたことに疑問を感じながらも、和幸商会に住民票などを送ってしまっていた。
偽造された辞任届と住民票がそろえば、届け出は完了する。あとは吉岡氏が出席したとする取締役会、株主総会の議事録を作成すればいい。案の定、何者かに偽装された議事録が見つかった。(つづく)
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