2024年11月22日( 金 )

積水ハウス63億円事件 地面師に狙われた時代遅れの登記システム

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積水ハウスが地面師事件の経緯公表「リスク管理不十分だった」

 積水ハウスは6日、昨年8月に発生した地面師による詐欺事件について、社外役員による調査報告の概要を公表した。

 それによると、問題の土地売買で手付金を払った後に複数のリスク情報が寄せられながら、「嫌がらせの類である」と判断。仮登記を本登記(登記を完了)すれば沈静化するとの甘い考えで、残代金を支払っていた。

 最大の問題点は、土地所有者を証明するため地面師が提出した偽造パスポートなどの真偽を見抜けなったこと。調査報告は、同社のマンション事業部や法務部、不動産部の牽制機能が果たせなかったとして厳しく指摘したものの、会長、社長らの責任には言及していない。

 今回の大型詐欺事件を、視点を変えて見てみたい。これは、積水ハウスだけの問題ではないからだ。現在の不動産登記システムでは添付書面の偽造を見破ることは困難。とくにパスポートや免許証などが巧妙に偽造されていれば、捜査機関でもない限り、真偽を見抜くことはできない。

 事件の大小にかかわらず、不動産に関する詐欺事件の根本的な問題は「書面の偽造ができる」、そして「登記申請から完了(積水事件の場合は「却下」)まで1週間も時間がかかる」ことではないだろうか。詐欺師―地面師の多くは、申請と同時に行われる決済から登記の却下までの“1週間のタイムラグ”を狙ってくるからだ。

 仮に、法務局に本人確認書類の偽造を判別できる機能があって、登記完了が即時に終わるようになっていれば、地面師の出る幕はなくなる。登記申請から登記までの期間を短縮するだけでも、地面師による被害は減るはずである。

 一例として、ビットコインとともにブロックチェーン技術が注目を集めている。なかでも、不動産取引を安全かつ透明にすすめることに有用だとされているのが「スマートコントラクト」だ。契約の電子化に加え、改ざんや二重譲渡などを防ぎ、決済と登記が自動化されることで地面師が入り込む余地もなくなると期待されている。

 積水ハウスの被害は氷山の一角であり、地面師が暗躍する時代はこれからも続くだろう。国は国民の財産を守る義務がある。本件が大きく報道されたことを契機に、国は土地行政の在り方を見直すべきだ。

【永上 隼人】

 

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