地方スーパーの生き残り策(8)
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お客さま第一主義。多くの小売業が経営の中心にうたっている言葉である。この言葉はお客の要望や希望を第一に商売するということだが、これを実行するのは容易ではない。なぜかというと、すべて相手の都合を優先しなければならないからである。それは価格であり、品ぞろえであり、店舗管理であり、鮮度であり、従業員のサービスと限りがない。それらのお客さま第一を提供し始めるとお客はそれを際限なく求めてくる。極めて安いという明らかな価値を提供しない限り、お客が求める要求はとめどもなく拡がる。何せ一所懸命働いたお金を手に買い物にやってくるのである。まさに神様扱いを求める。だから納得がいかないとモンスターにもなるのである。
では、お客さま第一を実現するにはどうしたらいいかということである。まず、トップを始め、経営幹部が本気でそれを実行しようと決断することである。そして、それを徹底して共有する。しかし、それを共有し、実現するのは容易なことではない。
人にはそれぞれ気分という不確定要素があるからである。同じ現象でも人はその時の感情の位置でその評価を変える。従業員でもお客でもそれは同じである。たとえば、ある時は十分納得できることでも違う時にはそうではないということになる。それをなくす唯一の方法は常に最高のサービスを提供することである。それを実行するのは従業員が自分の仕事と会社に愛情を持っているということが前提になる。しかも、それを全従業員が同じレベルでもつということが基本である。
では、従業員が会社と仕事に愛情をもっためにはどうしたらいいかということである。
私たちの周りではサービスという言葉が普通に使われる。このサービスの意味を考えてみよう。ゴルフでもサービスホールというのがある。これはほかのホールに比較して「優しい」という意味である。しかし、欧米にはこの言葉はない。なぜならサービスの意味が違うからだ。サービスには奉仕とか尽力といった意味もあるが「礼拝」の意味でも存在するということである。つまり祈りの行為ということである。そのレベルでお客第一を考えて初めてその入口に立つことができる。そう考えるとお客に100%沿うことがいかに容易でないことかがわかる。最高のサービスの原点は感謝と誇りである。所属する企業にこの2つを持たない限り、従業員はお客さまに最高のサービスを提供することはできない。
強い経営とは従業員がこの2つをしっかり持てる職場環境を実現することである。
それにはいくつかの具体的な方法が必要になる。
まず、基本的な条件だが、仕事が好きな人間を集めるということである。好きでないことで成功するのは極めて難しい。まさに好きこそものの上手なれである。ついで経営者が目指す着地点をはっきり意識することである。あとはそれを実現するために何をするかを具体化することである。その思いを実現すれば競合に明らかな差がつく企業、店舗ができるはずである。隣の競合店を見てそれなりの対策を立てるやり方はもはや何の役にも立たない。Make a Difference、違いがわかる店づくりをどう実現するか?
新業態も地域連合もそこに目標を置いての行動ということになる。(了)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。
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