2024年12月25日( 水 )

25年かけて築いた「Ritzwell」ブランド~家具を通じて、すべての人に喜びを(後)

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(株)リッツウェル

世界最高峰の家具の祭典「ミラノサローネ」への挑戦

 古くから畳文化の日本では、近代以前には家具といえばタンスや棚などを始めとした「収納家具」が主流。日常生活でイスや机、ベッドなどの「空間創造家具」を使うようになったのは近代以降の話で、欧米諸国に比べるとまだまだ歴史が浅く、いわば空間創造家具において日本は後進国になる。そのため、日本の家具が海外で評価を受けるというのは、極めてハードルが高く、また栄誉あることなのだ。

 毎年4月にイタリアのミラノで開催される、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」(以下、ミラノサローネ)。1961年にイタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために誕生したミラノサローネは、世界のトレンドを牽引する大イベントとして世界の業界関係者から高い注目と評価を受け、年を経るごとに規模を拡大。欧米はもとより、アジア、中近東、ロシア、南米、オーストラリアなど世界各国の建築家やデザイナー、バイヤーなど30万人以上が訪れるイタリア屈指のビッグイベントへと成長した。ちなみに、2017年に行われた第56回ミラノサローネでは、イタリア国内外から2,000以上の出展があり、来場者は165カ国から34万人を記録。今年は4月17日~22日の会期で開催される。
 そんなミラノサローネだが、そもそもの開催趣旨はイタリアブランドの家具などをアピールすることで、イタリアの経済活性化に寄与すること。そのため、イタリア国外の業者への門戸は狭く、出展者のうち国外業者はわずか3分の1程度。日本から単独ブースで出展できるのは、カリモク家具(株)(愛知県東浦町)や(株)マルニ木工(広島市)、(株)飛騨産業(岐阜県高山市)など、わずか4~5社だという。

 (株)リッツウェルではそんな狭き門をくぐり抜け、08年に初出展をはたして以降はほぼ毎年のように出展を重ね、13年以降はついに単独出展を達成。今年で6回目の単独出展となる。世界の一流メーカーがひしめき合う展示パビリオンエリアでの出展を重ねてきたことで、同社のブランドは少しずつ、しかし着実に世界に知れわたるようになってきた。

 「毎年出展していると、少しずつではありますが、世界のバイヤーにRitzwellの名が浸透してきているのを感じます。ミラノサローネを世界に向けての情報発信拠点だと考え、今後も挑戦を続けていきたいという思いです」と敏明会長。
 一方の晋作社長も、「ミラノサローネへの出展は、世界の舞台へ挑戦していくことに意義があります。また、挑戦することで成長につながっていく過程そのものが、とても楽しいのです。何度も挑戦してきたことで、少しずつですが、『どうやったら世界の舞台で戦っていけるか』がみえてきた部分もあります。ただし、目的は海外ではなく、あくまでも我々が理想とする家具づくりを追求していくこと。世界やトレンドに媚びることなく、大事なのはRitzwellらしさです」と、ミラノサローネを通じた世界への挑戦についての思いを語る。

 家具の見本市として世界最高峰のミラノサローネへの出展は、同社にとってはまた1つの大きな転機となったようだ。

新たな25年に向けた、家具づくりへの思い

 家具・インテリアの世界でも、もちろんのことながらデザインの流行り廃りはある。ただし、ファッションや電化製品のように目まぐるしいスピードではなく、流行の移り変わりのスパンでいうと、ちょうど住宅業界のように、ややゆっくりとしたもの。とはいえ、今あるデザインが、やがて受け入れられなくなっていくこと自体は、避けようのないことなのだ。

 晋作社長は、「デザインの移り変わりに関しては、どの業界や製品でもそうでしょうが、常に新しいものを生み出していくほかありません。ただし一方で、できる限り長く通用するデザインを追求していきたいという思いもあります。やはりものづくりは何事も、自らが納得しないことには面白くありません。急がず、あせらず、自分たちが良いと思える家具づくりに真剣に向き合っていくこと。そして、多少大げさかもしれませんが、家具を通じて関わる人すべての人生を良くしていきたいという思いのもと、これからも進んでいきたいと思います」と、これからの壮大な目標を語る。

 一方の敏明会長も、「これまでの25年間は、いわば“野焼き”のようなもの。マッチで火を点けてジワジワと広がっていくように、Ritzwellの家具に共鳴・共感してくれるお客さまが増えてくれたことで、ここまで弊社の基礎ができたのではないかと思っています。次の世代に交代して、これからまた新たに25年を経て半世紀を迎えたときには、Ritzwellのブランドもそれなりにできているのではないかと期待しています。よく商品づくりで大事なのは“ニーズ”や“ウォンツ”といわれますが、我々にとって大事なのは、いかにRitzwellの家具を通じてお客さんに喜んでもらえるか。その理想は変えることなく、今後も受け継いでほしいですね」と、これまでの歩みを振り返りながら、自身の家具づくりへの思いを語ってくれた。やはり根底にある家具づくりへの強い思いは、両者とも同じ方向を向いているようだ。

 25周年の節目と世代交代を迎え、新たなステージへと突入した同社。日本や世界という枠組みにとらわれることなく、理想を追い求める視線は、遥か未来へと向けられている。今後のさらなる飛躍が楽しみだ。

(了)
【坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮本 晋作
所在地:福岡市博多区板付5-2-9
設 立:1992年5月
資本金:2,000万円
URL:https://ritzwell.com/

 
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