小売業―かつてない激変期(7)~まだあるリアル店舗の難題
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図1と図2は日米の競合例を示したものである。日米とも所によっては車で10分程度の範囲に十指に余る競合がひしめくというのは今や珍しくない。つまり、出店の意志はあっても思ったように出店できないのである。とくにスーパーマーケットはある程度の商圏人口がないと出店は難しい。運営コストが高いスーパーマーケットはある程度の坪あたり売上がないと採算が取れないからである。商圏を無視した出店は命取りになる。この状況に無店舗の競合が参加するのだから、その苦境は改めて説明するまでもないはずだ。
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こだわりのスーパーマーケットは生き残れるか?
「こだわりのスーパーマーケット」といわれる企業がある。しかし、その範囲は結構広い。普通のスーパーマーケットのお客1人あたりの買い上げ単価は1,800円前後である。高質の場合はこれが20~50%増える。ただ、高質スーパーマーケットの成立条件は厳しい。
表1はある高質店舗の集客を数値で検証したものである。実績数値は競合が激しい昨今、競合店を通り越して来店してもらうことがいかに容易でないかを物語る。世帯支出は福岡市の年間食費支出86万4,000円を基に算出したものであるが、足下1kmのシェアでさえ20%に過ぎない。このことは競争店が多い地域ではどのような差異化をもってしても商圏の拡大が容易でないことを物語る。このことは通常型の場合のシェアの問題を如実に示している。通常型の場合、3キロ以遠からの集客は期待できない。さらに足下シェアを考えるとせいぜい高質型の7掛け程度である。そう考えるとこのケースでは通常型スーパーマーケットの売り上げは多くても10億程度いうことになる。これが現実である。
高質店の難しさはもう1つある。それは対象世帯の問題だ。エンゲル係数といわれる食費支出は家計支出のなかで最も大きいものの1つだ。日本のエンゲル係数は総支出の4分の1を超えている。当然、価格より質を優先できる世帯は限られる。
ただ、表1に見えるようにこの店舗の売上の約5%が3km以遠からのお客で占められていることだ。もし、この店が通常型ならそれは不可能だ。それだけではなく、足下商圏からの集客も当然、低下するはずだ。そんな見方をすれば、高質店はそれなりの戦略として十分効果があるということができる。しかし、そこにはもう1つの問題が立ちはだかる。
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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