豊洲移転に「危ない、待った!」 構造設計一級建築士の鳴らす警鐘(前)
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東京都の豊洲市場は、有害物質や構造上の安全性などの問題を積み残したまま、2018年10月11日の開場へと向かっている。新市場建物の構造上の問題点については、構造設計一級建築士で、数々の欠陥マンション問題で技術アドバイザーを務める協同組合建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事の分析をNetIBで伝えてきた。昨年11月、同機構および仲盛氏は、専門家としての正義感から構造上の問題を是正するよう東京都に求める訴訟を東京地裁へ提訴。それを受けて、4月14日、市場関係者らが仲盛氏を講師に招き、移転反対集会を開催するという。仲盛氏は、豊洲市場の安全性にどのような警鐘を鳴らしているのか――。
安全性に関わる問題を司法が放置か
――建築構造調査機構は、昨年11月21日、東京豊洲市場の構造上の安全性について東京都に是正措置を求める訴訟を東京地裁に提起されました。その後の経過は。
仲盛 12月上旬、東京地裁から照会書が送られてきましたので、12月15日付で回答書を提出しました。1回目の期日は、今年の2月ごろかと思っていましたが、東京地裁からは何も連絡がなく、3月13日、担当書記官に裁判の進行を尋ねる文書を送付したところ、「当事者適格も含めて、現在検討中」との回答。その後、3月26日にも再度問い合わせの文書をFAXで送付したところ、3月30日(日付は3月28日付)、判決が届きました。
――一度も口頭弁論が開かれることなく「判決」ですか?判決は、どういう内容でしたか。
仲盛 判決は、「原告の請求を却下する」という主文でした。判決の理由は、「原告は福岡在住で、豊洲市場の倒壊の影響を受けないので、”本件訴えの利益を有する者とは認められない”ということです。
また、判決は「当該建築物の倒壊により直接的な被害を受けることが予想される者は是正命令の発動を求める義務付け訴訟を提起する法律上の利益を有する」との判断を示していますので、市場関係者や豊洲市場に隣接する者などは、提訴する資格があるということです。――わからなくもありませんが、その単純な理由で結論を出すのに4カ月以上もかかるのでしょうか。
仲盛 私には裁判所の事情はわかりませんが、東京都は豊洲市場を今年10月11日に開業すると決定しています。東京都としては開場が遅れることは絶対に避けたいでしょうから、東京地裁と東京都との間で何らかの協議が行われていると勘繰りたくもなります。我が国の憲法では、司法と行政は分立していますから、そんな協議は行われていないと信じたいものです。
――仲盛さんが代表理事をされている建築構造調査機構は福岡に本部を置く団体であるため、東京都の施設である豊洲市場の直接の当事者ではないというのが、裁判所の判断ということですね。
仲盛 私も協同組合も東京都に存在していませんから、直接の当事者といえないかもしれません。それは承知したうえでの提訴です。なぜなら、豊洲市場の施設における日建設計による設計の偽装を見逃すことができなかったからです。
また、東京都は建築主かつ計画の審査を担当する行政庁でありながら、設計の偽装を見逃しています。施設の安全性が確認できないまま移転が強行されれば、地震が発生した場合、市場で働く方など関係者の生命が危険に晒されます。安全を確保するための是正措置を講じてから移転してもいいのではないかと思います。大地震が頻発するいま、構造設計の専門家として、再び悲劇が繰り返されることを見捨ててはおけません。――豊洲市場の構造設計における偽装はどういったものですか。
仲盛 1つ目は、『層間変形角が建築基準法を満たしていない』ということです。
2つ目は、『保有水平耐力計算における係数を不適切に低減しているため、安全が確認できない』ということです。
3つ目は、鉄骨鉄筋コンクリート造である『建物1階の柱脚の鉄量が規定の半分程度しか存在しない』ということです。
これらの問題点は、某有名経済誌からの依頼に基づき、豊洲市場の水産仲卸売場棟の構造計算を検証したところ、浮かび上がりました。(つづく)
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