「251 棟が耐震強度不足」の東京都で放置される豊洲市場の安全性(後)
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詐欺的な耐震マーク
私が構造上の安全性について指摘した豊洲市場に関して、東京都は、指摘への反論もできずにいるが、東京都のサイトには、豊洲市場の建物に対して、東京都が「耐震マーク」なるものを交付したことが紹介されている。
「東京都耐震ポータルサイト」の耐震マークの説明には、以下の注意書きがある。「東京都耐震マーク表示制度は・・・建築物の耐震性を保証するものではありません」
耐震性を有しているからこそ「耐震マーク」が交付されるのではないのか。申請費用は無料とはいえ、耐震マークが交付されても、実際に耐震性を有しているかどうかの証明でないのであれば、まったく無意味な制度である。
市場関係者から、東京都に対して、耐震マークを交付した法的根拠および工学的根拠の提示を求めてはどうかと思う。法的根拠も工学的根拠もなく、さも耐震性を確認したかのようなお墨付きシールを乱発することは詐欺行為に等しく、とても行政がすべきことではない。
なぜ、このような詐欺に近い行為を東京都が行っているのか、理由を聞きたいところであるが、もしかすると「東京都は、建築物の耐震化を推進しています」とアピールすることが目的かもしれない。せっかく、「耐震マーク」を制度化したのであれば、実態がともなった制度として運用しようと考えないのであろうか。
都内で、耐震性に問題を抱えた建物は、報じられた251棟だけではない。報告の対象となっていたのは、5,000m2以上のホテルや商業施設や幹線道路に面した高層建築物などである。住宅密集地には、旧耐震基準の木造の建物が密集しており、地震発生時には緊急車両の通行が困難になると想定されている。また、超高層ビルは、ビルの構造自体は耐震性が高いかもしれないが、避難に関して大きな問題を抱えている。
関東から東海にかけて、大地震発生の確率が高まっているといわれており、東京都の地震対策は一刻の猶予もならないはずである。
多くの建築物に構造計算偽装の可能性アリ
東京都が耐震強度不足と発表した建物は、1981年以前の「旧耐震基準」により設計された建物が対象である。1981年以降の「新耐震基準」で設計された建物も、安全を確認できない建物が多く存在している。
【参照記事】
・全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む構造計算の偽装豊洲市場で発覚した構造計算の偽装の1つは、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の保有水平耐力計算における係数を偽装して、実際よりも耐震強度が高いように見せかける手法であったが、多くのSRC造の建物において同様の偽装が行われており、私が裁判の原告住民を技術支援した福岡県久留米市のマンションでも同じ手法の偽装が行われていた。
鉄筋コンクリート造(RC造)の建物においては、柱と梁が交差する部分(接合部または仕口という)の検討を省略するという偽装が行われていた。これまでに検証したほとんどのRC造の建物で、偽装が確認されている。
このように、SRC造もRC造も、ほとんどの建物において、構造計算偽装が行われている可能性が高いにもかかわらず、前述した東京都の「耐震マーク」は交付されるであろう。福岡県や福岡市などの行政にも、これらの偽装について質問をしているが、「建築確認を受けている」という無責任な回答であった。行政としては、これらの偽装が表面化した場合、建築確認の審査を行った行政庁の責任が問われるので、逃げざるを得ないのであろう。
豊洲市場の問題に話を戻すが、今回の「却下」という判決を受け、築地市場の関係者たちが立ち上がる動きを示している。私は、4月14日(土)、築地市場関係者の集会での講演を依頼されているが、この集会が、築地市場関係者の総決起大会となるのではないかと思っている。
(了)
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・豊洲移転に「危ない、待った!」構造設計一級建築士の鳴らす警鐘(前)関連キーワード
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