佐川氏の証人喚問をめぐる論争~福山哲郎参議院議員VS北村晴男弁護士(前)
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青沼隆郎の法律講座 第3回
お粗末な場外乱闘
国会議員の論理性の欠如に加えて、高名な弁護士のデタラメ論理が加わって繰り広げられた場外乱闘が、福山哲郎参議院議員と北村晴男弁護士の佐川氏の証人喚問をめぐる論争である。
いかに弁護士がデタラメな論理を堂々と、かつ自信満々に述べるかの例として国民は理解すべきであろう。
場外乱闘は、あるテレビ番組で佐川氏の証人喚問直後に福山議員が出演し、コメントしたところ、それに対して北村弁護士が自説を展開するかたちで勃発した。途中でMCが中断しため、この論争はお互いの主張を述べただけで終わった。
(福山議員のコメント要旨)
佐川氏の証言は、ほとんどの質問に対し、刑事訴追のおそれを理由に「経緯」である事実について証言を拒否したのに対し、同じく「経緯」である総理大臣や財務大臣の改ざん事件への関与についてはキッパリと関与がまったくないと断言した。この使い分けは極めて不思議というほかないとコメントした。
(北村弁護士のコメント要旨)
北村弁護士は弁護士らしく、本件の犯罪が虚偽公文書作成罪であると断言し、佐川氏は自分の行為については刑事訴追のおそれを理由に証言拒否することは権利であるが、他人の行為については、その関係が成立しないため、真実であるかぎり証言できる。福山議員が経緯という概念で事実を、ひとくくりに議論すること自体、誤りであると主張した。北村弁護士の独善
北村弁護士は弁護士というより、もはやテレビタレントである。その論理は極めて浅薄であるが、法律の知識に乏しい一般のテレビ視聴者には十分説得力がある。これにだまされてしまう市民が多いことを考えると、北村弁護士の責任は福山議員の直感的な無思考論理より、はるかに罪深い。
北村弁護士が失念した根本的に重要な視点は、佐川氏が改ざん犯人にしか証言できない証言をしたという事実である。改ざんにまったく関与していないと証言できるのは改ざんの犯人か改ざん犯人の行為を目撃した者に限られる。本件の公文書改ざんの犯罪の性質と佐川氏の理財局の最高責任者という立場を考慮すれば、佐川氏が犯人そのものと考えるほかなく、その立場で証言したと理解するほかない。
佐川氏は一方で、刑事訴追のおそれを理由に多数の証言拒否をしながら、他方では自己の将来の保身か利益のために、安倍晋三首相や麻生太郎財務大臣の援護射撃をした。もちろんその援護射撃自体の真実性はまったくなく、補強証拠を示さない完全な供述証拠に過ぎない。このような重大矛盾の指摘が福山議員の発言には込められている。
北村弁護士の論理の根本的誤謬は「経緯」について、自己行為か他人行為かで、その証言拒否範囲を恣意的に区分したことである。「経緯」は、そもそも証言拒否の対象とならないという重大視点を完全に踏みにじった。福山も同じく、経緯が証言拒否の対象にはならないという視点をもたなかった。経緯は「罪となる事実」(犯罪構成要件事実)ではないから証言拒否の対象とはならない。
(つづく)
【青沼 隆郎】<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。関連キーワード
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