築地市場移転を阻止!東京都提訴のバトンを都民・市場関係者へ
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築地に引き継がれた専門家の良心
14日、東京都内で開かれた築地市場の移転に反対する都民の集会で、(協) 建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事が講演。問題視されている水産仲卸売場棟の構造設計に関する解説を行った。集会には、築地市場の仲卸業者をはじめ、移転に疑問を抱く都民ら約200名が参加。10月11日に予定されている豊洲市場への移転を阻止すべく、問題認識の共有が図られた。
仲盛氏は、同建物について以下の3つの問題点を指摘。NetIBは設計者の(株)日建設計に対し、質問を行ったが具体的な回答は得られなかった。
(1) 層間変形角が建築基準法を満たしていない。
(2) 保有水平耐力計算における係数を不適切に低減しているため、安全が確認できない。
(3)鉄骨鉄筋コンクリート造の建物1階の柱脚の鉄量が規定の半分程度しか存在しない。(詳細はコチラ)
すべて建物の耐震強度に関わる重大な問題だが、とくに(1)は、たとえ建物が倒壊に至らなくても、その機能性を著しく損なう可能性を大きくしている。建築基準法施行令(第82条の2)では、200分の1以下と定められているが、問題の水産仲卸売場棟においては東京都が設置した市場問題プロジェクトチームの会議のなかで、東京都が日建設計に対し、層間変形角を100分の1に緩和していたことが判明している。
層間変形角とは、地震などで横から力が加わった際、建物がどれだけ建物が歪むかを見る数値であり、たとえば層間変形角200分の1であれば、高さ2mの建物だと歪みは1cmだが、100分の1だと2cmとなる。
「豊洲市場の水産仲卸売場棟には個別認定はなく、明らかに違法であり、地震に対して揺れすぎ設計だ。東京都と日建設計の間で『この建物だけはいい』などと勝手に基準を逸脱することはあってはならない」(仲盛氏)。層間変形角100分の1による建物の歪みによって、地震時にサッシや外壁の落下、ドアの開閉が困難になるなどの不具合の発生が予想される。
仲盛氏は構造設計の専門家として危険な建物を見過ごしてはならないとの思いから、昨年11月、費用を自己負担し、豊洲市場の構造上の安全性について東京都に是正措置を求める訴訟を東京地裁に提起。しかし、同地裁は今年3月28日付で「原告は福岡在住で、豊洲市場の倒壊の影響を受けないので、本件訴えの利益を有する者とは認められない」との理由で却下された。
今回の講演を受けて、仲卸業者は「(築地市場は)80年営業を続けた、汚染されていない『食の聖地』。この伝統を壊したくはない」と移転反対の決意を語った。移転差止の仮処分申請も含めて東京都に対する訴訟を検討するという。
市場の場所として築地が選ばれた理由には、大地震を経験した東京ならではの「東京都民の食の安全を守る」という観点がある。「関東地方も大きな地震が襲った東日本大震災で発砲スチロールの箱すら落ちなかった」「地名に『地』がつく通り、地盤が丈夫なところ。『洲』がつくように地盤が脆いのが豊洲」と市場関係者は訴える。
「ほぼすべての建築士は、商売を続けるために、行政や大手企業、業界団体に文句をいえない。提訴の際には、私が全力でサポートする」という仲盛氏。豊洲新市場が地震で崩壊し、約1,375万人が暮らす東京都で経済危機や食糧問題が発生すれば、日本全体がその影響を免れない。移転予定の10月11日まで残り半年を切った。築地の人たちの戦いに注目が集まる。
【山下 康太】
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