【悪質タックル余波】日本大学が恐れる「志願者減」
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「大学がもたない」職員の声
22日午後、悪質タックル問題で直接の「加害者」として批判されていた20歳の学生が、日本記者クラブで会見を行った。
学生は会見で、日本大学アメフト部の指導陣から過酷なプレッシャーを受け続けて冷静な判断ができなくなっていたこと、さらにコーチと監督から「QBを1プレー目でつぶせ」「けがをさせればこちらの得」などと指示があったことなどを赤裸々に語った。しかし、日本大学(日大)広報は同日夜にコメントを発表、「つぶせ」とは「思い切って当たれ」の意味であり、「誤解を招いたとすれば、言葉足らずであった」と、学生の意見を真っ向から否定している。「こんなことを続けていては大学がもたない。(来年の)受験者がどこまで減るのか、現段階では恐ろしくて予測もできない状態だ」
そう語るのは、日大の職員。22日に学生の会見が行われた後、日大OBを通じて取材に答えたもの。
日大は今年、約11万3,000人が受験した国内最大のマンモス大学。学校法人日本大学傘下にある、幼稚園から大学院までの手数料(受験料)収入の合計は約43億1,200万円(2016年度)で、その多くは大学受験で得た収入だ。
企業の売上高にあたる日大の事業活動収入は約1,900億円、そのうち学費が約1,000億円をしめるが、その巨大組織ですら急激な少子化の影響をまぬがれることはできない。そこにきて、国内メディア総がかりのネガティブキャンペーンが繰り広げられるのだから、運営実務を担う職員が悲鳴をあげるのも無理はない。そもそも日大の対応がまずかった。監督である内田正人理事は雲隠れした挙句に誠意の感じられない謝罪会見で批判を浴び、上層部の見解を垂れ流すだけの広報部の対応も不信感に拍車をかけている。「危機管理学部」を置いていることがもはや自虐的に感じられるほどで、日大アメフト部の異常な勝利至上主義や、パワハラの横行するチーム運営事情も次々に明らかになり、もはや活動停止か悪くすれば廃部も待ったなしの状況だ。
改革の契機となるのか
昨日の会見で、学生はアメフトを辞めると明言し、「これから何をすればいいのかわからない」とも語った。顔と名前を全国にさらした謝罪会見は、弁護士の助言のもと身を守る意味もあったことは当然だろうが、結果的に学生は同情される立場になり、逆に日大は若者の人生を台無しにした「国民の敵」として糾弾される側にまわってしまった。
会見で質問に立った記者にワイドショー関係者が複数いたのは、幅広い層が関心を持っていることの表れだろう。ワイドショーの主な視聴者が主婦などの女性であることを考えれば、日大は「母親」という、最も敵にまわしてはいけない層に嫌悪感を抱かせた可能性もある。「田中(英壽)理事長―内田理事ラインが学内を牛耳る、現体制に対する不満の声が学内でも出始めている。これまでは恐怖政治におびえて声をあげられなかったことを考えれば、それくらい危機感があるということだ」(前出の日大職員)
若者は、まがりなりにも公の場に出て自分の言葉で語った。大人はどう応えるのか。日大は教育機関であり続けるかどうかの瀬戸際に立たされている。
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