【事件】堺医療グループ・ゴールデンコンビ決裂の真相(2)
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昨年5月、福岡の医療関係者を驚かせる、ある事件が起きた。福岡市南区の医療法人、堺整形外科医院の元理事長で医師の堺研二氏が名誉棄損容疑で逮捕されたのだ。知人女性を中傷する文書を女性の関係者に送信した疑いだった。
堺氏は医療界でやり手の経営者として知られ、メディアへの出演などで知名度の高い有名人だった。責任ある立場の人間が、なぜ犯罪行為に手を染めたのか。背景には、仲の良い兄弟が巻き込まれた、複雑な人間模様があった。
統合は兄・正孝氏からの提案
兄弟がタッグを組み、整形外科と整骨院との相乗効果で、グループは急拡大。近年はグループ売上高で20億円を超えるまでに成長していた。
とはいえ、最初から協力関係にあったわけではなかった。お互い創業の地は別。その後、双方が近づいたのは移転先を探す中で、偶然近くに物件が見つかったからだった。そして、グループ統合が図られたのは、今から10年ほど前に遡る。
2007年頃、グループ統合の話をもちかけたのは整骨院側、兄の正孝氏だったという。その時はまだ「緩い」結合状態で、患者の行き来があった程度だった。「整骨院では限られた処置しかできなかったが、医療との連携で手厚い対応ができる。今後、より密接な関係を築けるスキームを考えてほしい」と、会計士事務所に相談した。
当時の整骨院は利益は上がっていた。資金繰りは逼迫とまではいかないものの、設備投資と納税で財務が毀損していた。正孝氏個人の不動産投資での失敗もあり、今後の成長を阻害する可能性もあったのだ。当時、正孝氏は「兄弟が抜けた後も永続できる壊れないグループを形成してほしい」と要望していたという。
同年末、研二氏に了承を得て、事業計画を立て始めた。資産管理会社を設立して、正孝氏のネックとなっている不動産、整形外科は医療法人保有分の不動産を移すことに決めた。一年後には不動産管理会社である「(株)堺医」を設立。兄弟コンビでグループを盛り立てるという新たな事業計画を立て、取引銀行も再編。資金繰りは楽になった。それまで銀行の顔色をうかがいながら運営を行っていたが、流れが良くなると銀行自らが融資の話をもち込むようになった。設備投資も進み、グループ統合は大きな成果を生んだ。2009年にグループ統合はほぼ完成した。
コンサル導入で流れが変わる
課題が1つ解決すると、新たな課題が浮上するのは世の常。資金に余裕ができると、内部で衝突が起きるようになる。企業内ではよく聞く話だ。このころ始まったのが、コンサル導入による人事制度改革。さらなる利益向上を図るため、企業運営にとっては、決して間違った選択ではなかった。しかし、医療の本質、また人材育成という意味合いでは、方向性に違いが生じることになる。実はここに「FAX送信事件」の根源が存在する。
整骨院の従業員として入社していたAという女性。Aは整骨院の人事改革で正孝氏に高く評価され、正孝氏の薦めで、次に整形外科の理事長付という要職に就いた。そしてAは、整形外科の人事制度も変え始めた。このAこそが、名誉棄損の被害女性であったのだ。
(つづく)
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