【特別寄稿】豊洲市場の建築基準関係規定違反は時間の経過で適法になるのか!(中)
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
東京都建築指導課の不誠実な回答
東京都の建築指導課は、「建築確認においては、建築基準法のみをチェックしている」と、マスコミからの質問に回答している。この回答は、我が国の建築確認の実情とまったく異なる回答であり、建築基準法第6条を否定する回答である。
(建築基準法第6条から抜粋)
第六条(建築物の建築等に関する申請及び確認)
1 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならない。「法律ならびにこれに基づく命令および条例の規定」とは、建築基準法に関連する建築基準法施行令、施行細則、国土交通省・建設省告示、各行政庁条例などが含まれる。建築確認審査においては、建築基準法のみならず、関係法令、告示、条例までチェックされるのが実態である。
一例として、東京都文京区の分譲マンション(ほぼ完成)が東京都条例に適合していないとして、東京都建築確認が建築確認を取り消した事例がある。マンション販売業者は、東京都の建築確認取消を不服として提訴していたが、今年5月24日、東京地裁は、「条例違反を理由に建築確認を取り消した東京都の判断に誤りはない」との判決を言い渡した。東京都が都条例違反を理由に建築確認を取り消し、裁判所も、当然のことながら、これを認めたのである。
一方で、豊洲市場に関しては、建築基準法以外をチェック項目として認めると、東京都にとって都合が悪くなるので、「建築基準法以外はチェックしない」と開き直っているのである。市場の移転が最優先という東京都の立場はあるかもしれないが、東京都自らが判断を下し裁判所も認めた建築確認取り消しの事実さえも、東京都建築指導課は否定するのであろうか。これは東京都建築行政の大きな矛盾である。
建築確認審査において、建築基準法以外の法令・告示・条例をチェックしないのかどうか、民間の建築確認機関に質問をすればわかる。東京都の指定確認検査機関である(一財)住宅金融普及協会はデータ・マックスからの質問で、建築基準法第6条の「法律ならびにこれに基づく命令および条例の規定」について「建築基準法施行令第9条に規定されている法令および高齢者、障碍者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、都市緑地法」と回答している。また、法令・基準以外にも「日本建築行政会議編集の取扱資料や特定行政庁が公開している取扱資料」を建築確認の審査に用いるとしている。
もし、東京都建築指導課のコメントのように、建築基準法以外の法令・告示・条例をチェックしないのであれば、東京都と民間の確認検査機関で、審査の内容が異なるということになる。つまり、たとえ建築関係規定に適合しない建物であっても、東京都に建築確認を申請すれば、問題のない建物として建築確認済証が交付されることになる。我が国の建築確認制度を根底から覆す事件となり、建築業界に大混乱を与えることは必至である。
(つづく)
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