【特別寄稿】豊洲市場の建築基準関係規定違反は時間の経過で適法になるのか!(後)
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
結論ありきの市場問題プロジェクトチーム
市場問題プロジェクトチーム(PT)に出席し、豊洲市場の構造上の問題点を指摘した建築構造専門家もいたが、論点をすり替える日建設計や座長らに翻弄され、質問を続けることができなかったことが、PTの議事録から読み取れる。第2回PTの議事録(URL)を見ると、構造計算に関して、PT委員が総がかりで質問者を封じ込めている様子を知ることができる。
PTには、建築構造技術者団体の代表として、(一財)日本建築構造技術者協会(略称「JSCA」)の森高英夫会長が委員として出席している。第2回PTで、日建設計の構造部門の代表として説明を行った常木康弘氏(日建設計取締役常務執行役員)は、森高英夫委員の下、JSCAの副会長でもある。
同じ団体の副会長に配慮したのか、森高英夫委員(JSCA会長)は、常木康弘氏が所属する日建設計の構造計算について「通常の建物よりもワンランク上の耐震安全性が確保されていると私は判断した」と、全面擁護の発言をしている。森高会長は、いかなる意図を以って、このような発言をしたのであろうか? 客観的に見ても、同じ団体の会長と副会長が演じている茶番劇にしか見えないのは私だけであろうか。
このような馴れ合いやお互いの保身、市場移転推進という東京都の意向などに支配されたPTは、結論ありきの単なる儀式に過ぎず、建築関係規定に違反している事実について議論をすることなく、東京都の望み通りに、PTとして安全宣言を出したのである。
建物の構造の問題は、専門的な分野であり、専門家が「問題ない」と発言すれば、法律や工学的な根拠がなくても、一般の方は、問題がないかのように受け取られてしまい、時間の経過につれて、忘れ去られるものかもしれない。しかし、建築関係規定に違反しているという事実は、たとえば、人の軽い風邪のように時間の経過とともに治癒するようなものではなく、是正されない限り、違反状態が継続するのである。
ここにきて、築地市場の仲卸業者の有志が、東京都に是正措置を求める訴訟の準備を進めていると聞いた。私が提訴した際には、当事者でないために「原告適格」がないと裁判所に判断されたが、豊洲市場への移転を迫られている仲卸業者は、間違いなく当事者である。建築関係規定に違反している施設での操業を余儀なくされる仲卸業者は大きな不安を抱えており、豊洲へ移転した後に、万が一、市場が使用できない状態になっては死活問題である。移転前に是正措置を実施することは、市場に入る業者にとっても、都民にとっても、回避してはならない緊急課題である。
韓国では商業施設が突然崩壊!
6月3日、韓国ソウルの4階建ての商業施設が突然崩壊し、住民1人が負傷するという事故が発生した。
中央日報によると、この建物の隣で進められている建設工事の影響で、壁のひび割れ・地盤沈下などの現象が起き、事故発生の1カ月前に、行政庁である龍山区庁に苦情が寄せられていた。しかし、行政当局は何ら対処せずに放置していたため、建物の崩壊という最悪の事態となったという。韓国龍山区庁の「事なかれ主義」は、豊洲市場に関する東京都の姿勢と共通している。建築関係規定に適合していない事実よりも、東京都の面子や日建設計の擁護が優先事項なのである。このような東京都の姿勢・体質を許さないという東京都民は、今こそ、立ち上がるべきではないか。
(了)
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