2024年12月21日( 土 )

福岡市、屋台選定議事録をようやく公開~背景に「高島市政の美化」

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「白塗り」に約1年半?

廃業となる屋台の閉店日に容赦なく営業指導を行う市職員

 2016年10月に実施された福岡市の屋台公募の議事録など関連資料のすべてが公開されていなかった問題で、市は6日、公開が遅れていた屋台選定委員会の関連資料をホームページ上で公開した。

 最も関連資料の公開が遅れていた第2回の屋台選定委員会が開かれたのは16年11月21日。公開まで実に約1年半も要したことになる。屋台担当のまつり振興課(旧・にぎわい振興課)課長は、取材に対し、「ホームページに公表する場合、関係機関と協議のうえで進めている」と説明。1年以上も協議が続いている理由として「表現」や「見せ方」「量」などをあげていた。

 今回、公開された屋台選定委員会の関連資料は、16年度の第2回から第6回(17年3月21日)までと17年度第1回(17年11月27日)。最新のものでも公開に約半年かかったことになる。また、16年12月12日に公開されていた16年度第1回(16年8月24日)の関連資料も「公開範囲を拡大した」として再掲載している。

 一方、昨年3月のデータ・マックスの情報公開請求を受けて公開された屋台公募の公文書のなかには第2回の関連資料が含まれていた。多くの市民が見ることができるネット上での公開を避けたとも捉えられかねない状況となっていたのである。

 公開が遅れた真の理由とは何か。屋台担当課長は「表現」や「見せ方」を理由にあげたが、たしかに公開された議事録を見ると、個人情報など非公開情報の秘匿方法が変更されている。それは、いうなれば「白塗り」。官公庁関連の報道でたびたび登場する黒塗りのマスキングではなく、右画像のように秘匿部分を空欄としているのだ。

 実施から約3カ月で公開された第1回の議事録は、当初、秘匿部分を消去する方法で非公開としており、秘匿内容の量がわからないなど透明性に疑問符がつくかたちとなっており、それが改善されたといえなくもない。

 しかし、この「白塗り」を考案するのに約1年半もかかるとは思えない。取材に対して「見せ方」や「表現」と答えた手前、市情報公開条例の取扱要綱で指定された情報公開文書の「黒塗り」とは異なる方法でなければならないと考えた結果ではないだろうか。

屋台公募を美化

白塗りされた議事録(第2回より)

 高島市政が公開をためらう理由は別にある。周知の通り、今回の屋台公募は、理不尽な営業エリアの削減、選定結果に影響した情報漏えいなどで多くの人気屋台を廃業に追い込み、全国的な話題となった大失策。一連の動きを追ったドキュメント番組を「行政への信頼を失墜させた」として放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てまでした高島市長としては、市民の怒りが冷めるのを待ちたいところだ。

 ところが、今回公開された関連資料は、市民の怒りを再燃させかねない内容も含まれている。「もし公募を実施しなければ、本年4月1日以降、福岡市の屋台の総数は90軒を下回るところでしたが、屋台公募により、現在も約110軒の屋台が営業しております」「公募によって、屋台をなくさない、屋台の数を維持する、屋台を残すという取り組みは実行できた」(17年度第1回議事録)。屋台公募の成功を強弁する市側(事務局)の発言だ。

 この内容に、強烈な違和感を抱く屋台関係者、屋台ファンは多いはず。実のところ、屋台公募で募集があった28軒のうち、5軒が辞退や音信不通などで出店せず、屋台軒数は、公募実施前より減少。とくに長浜エリアは公募屋台の出店はなく、かつてのにぎわいは失せている。地域住民や仕事帰りのサラリーマンの憩いの場であった赤坂の屋台は、公募場所から外されて消滅。多くの観光客が予約して訪れていた“観光資源”の屋台も廃業。なかには廃業となったことで、福岡市を相手取り訴訟まで起こした元屋台営業者もいる。

 軒数を除いた屋台の“惨状”を、議事録から読み取ることはできない。現実を顧みず、批判的な声には圧力をかける高島市政。屋台問題は、悪政によって多くの市民が実害を受けた事例として、決して風化させてはいけない。

【山下 康太】

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