昨今M&A事情(5)~シダックスがカラオケから撤退した事情(後)
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シダックスがカラオケボックスから撤退――。その報道を受けて、本業が給食事業だったことを初めて知った若い人は多いのではないか。シダックスはカラオケの代名詞であった。なぜ、売却するのか。そこには、カラオケ業界の厳しい現実が見えてくる。
グループ利用の店舗が「1人カラオケ」に敗れる
志太勤一氏は、カラオケボックス冬の時代に直面する。かつての我が世の春を謳歌した季節は去った。読売新聞(6月1日付朝刊)は、全国カラオケ事業者協会の話として、「1人カラオケ」が増えていることを、その要因に上げた。
近年は仕事帰りや2次会で、夜間にお酒や食べ物と一緒にカラオケを楽しむ利用者が減っている。一方、料金の安い昼間に利用する学生やシニア層が増えており、「カラオケではあまり飲食をしないため、客単価は落ちている」(同協会の担当者)という。
こうした利用者の変化に対応しきれなかったのがシダックスだ。1人カラオケ専用のボックスも登場しているが、シダックスにはない。グループを想定し広い部屋を次々と設けてチェーン展開していたため、客単価の下落で採算悪化に歯止めがきかなくなった。
赤字店舗を切り離したが、カラオケ事業の赤字は減らなかった
シダックスは大リストラを実施する。グループ内にSTC社(シダックストラベラーズコミュニティー(株))を設立し、カラオケ事業の赤字店舗をすべてSTC社に譲渡。16年3月末に取引先など外部の事業会社にSTC社が第三者割当増資を実施し、シダックスの出資比率を35%まで圧縮。不採算店は持分法適用会社のSTC社が所有するかたちにした。STC社で改善が困難の店舗のうち78店は売却や閉鎖した。
しかし、その後もカラオケ事業は赤字を垂れ流し続けた。
シダックスが公表した資料によると、SC社(シダックス・コミュニティー(株))のリストラを実施した初年度にあたる17年3月期決算の売上高は203億円で、前年より89億円減った。リストラ効果で最終損益は、前年の39億円の赤字から14億円の赤字に縮小。止血により、18年3月期は持ち直しが期待されたが、逆に悪化した。期末の店舗数は182店。売上高は182億円と前年より21億円の減。最終損益は23億円の赤字で、前年より9億円赤字が膨らんだ。SC社は32億円の債務超過に陥った。
カラオケ事業が足を引っ張り、シダックスの18年3月期の連結決算は、売上高が前期比3.7%減の1,428億円、営業利益は同7.9%減の11億円、最終損益は13億円の赤字(前期は32億円の赤字)と3期連続の最終赤字に沈んだ。
ここに至って、自力での再建は困難と判断。「カラオケ館」を運営するB&V社に売却した。今後は、本業である企業や小中学校の給食事業や学童保育の受託運営に力を入れる。
カラオケ業界トップは、業務用通信カラオケ「DAM」の第一興商となる。18年3月期の連結売上高は1,437億円。部門別では「ビッグエコー」のカラオケ・飲食店が売上高610億円、営業利益79億円と好調。覇を競っていたシダックスの脱落で首位を独走しそうだ。(了)
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