知られざる中国の現代版シルクロード「一帯一路」戦略の真の狙い(5)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
隠されたゴール
残念ながら、こうした動きに日本はまったくと言っていいほど食い込むことができない状態が続いている。それだけロシアや中国の動きに疎いのが日本なのである。習近平の掲げる「中国の夢」の象徴ともいえる「一帯一路」、その歴史的着地点を見極めつつ、本年、平和友好条約締結40周年を迎えた日本と中国の未来図を冷静かつ大胆に描きたいものだ。
その観点からも注目すべきは、習近平が最近打ち出した「ブロックチェーンを生かした世界の金融決済システムの標準化」である。インターネットは世界の情報ネットワークを一変させたが、ブロックチェーンは金融のあり方を含め、社会地盤を根底から変える技術として受け止められている。
その根幹の部分を中国がコントロールしようというのである。実は、これこそが中国が進める「一帯一路計画」の隠されたゴールといえる。金融システムを皮切りに社会構造そのものを「中国色」に塗り替えようというわけで、「ドル支配」を「仮想通貨中心」に変えようという試みにほかならない。
日本でもブロックチェーン技術の研究が金融機関を中心にして始まったが、残念ながら、中国と比べると周回遅れと言わざるを得ない。中国は香港やシンガポールを通じて、アジアやアフリカにもブロックチェーンによる新たなビジネスモデルの構築に余念がない。その結果、ブロックチェーンに関する技術特許の大半を中国が押さえてしまった。アリババはその代表格である。同社は何と15億ドルをブロックチェーン技術の開発に投入している。
中国では、ブロックチェーンを社名に使っている企業がすでに3,000社を超えた。昨年の段階では600社であったが、1年で5倍に膨れ上がったのだ。その急速な事業展開の裏には習近平の強いアメリカへの対抗意識が隠されている。同氏が掲げる「メイドインチャイナ2025計画」は科学や製造業の分野で中国を世界のリーダーの地位に高めようとする国家戦略である。その実現のためにもブロックチェーン技術を最大限に活用しようというわけだ。
かつて日本が国際的に注目を集め、世界から恐れられた「護送船団方式による産業政策」が今では中国の専売特許となりつつある。元祖「官民一体化大国」日本とすれば、アメリカ・ファーストでもなく、中国式の政府主導型でもない、独自の持続的国家発展計画を追求する時であろう。その起爆剤となる日本発の技術の萌芽はあちこちに眠っている。
たとえば、優れた脱炭素技術をもつ日本企業による「民主導の国際展開」。グローバルな観点からの水素や電力・省エネ分野でのアライアンスは日本が主導できる可能性が高い。低炭素製品の販売、サービスのグローバル・バリューチェーンづくりも有望である。現に、省エネラベル制度を導入した結果、ベトナムにおける日本製の家庭用エアコンの販売台数は倍増した。まだまだ日本が国際貢献できる分野は広い。ブロックチェーンの応用分野もしかりである。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連記事
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