「私たちは、患者さんご家族を援助します」の精神で 安心して頼られる精神科(前)
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(医)井口野間病院
「満足感を抱かせる入院」という視点
「精神科に入院経験のある患者さんが地域に帰ることについて、地域住民には不安感があります。実は患者さんのご家族でさえ困る場合も多い。精神科医療は、患者さんを地域にスムーズに帰すために何が必要かという課題に取り組んでいますが、精神科を取り巻く環境は、『臭いものに蓋』みたいな部分がまだ残っているのでは」。
そういうと、少し前までにこやかだった顔が、社会の偏見や差別とも向き合わねばならない医師の顔に戻った。スーツ越しでもはっきりとわかる大胸筋の盛り上がりと、浅黒く日焼けした肌。引き締まった風貌に加えて、はっきりとしたよく通る声が、対峙するものを魅了する。一見、ボディービルダーか俳優のようにも見える男性は、医師であるとともに複数の医療法人を束ねる理事長の顔をもつ。
高山成吉氏は、がんを専門とする経験豊富な外科医だ。その一方で、(医)井口野間病院(福岡市南区)、(医)周友会徳山病院(山口県周南市)、(一財)高雄病院(京都市)の理事長として、病院を置く各地域で良質な医療を提供してきた。そのなかでも、井口野間病院は特別な存在といえるだろう。
井口野間病院は現法人体制になった1995年から40年前、日本にまだ戦争の傷が残る1956年に開設された精神科・心療内科病院だ。開設者の井口淡医師は、1910年に九州帝国大学(現・九州大学)医学部を卒業後、長く久留米市で外科医院を開業していた。当時は、精神科を診療する医療体制が脆弱で、心を病んだ患者が安心して治療に専念できる病院が不足していた。その状況をみかねた井口医師は、70歳の時に精神科病院の開業に踏み切った。創業に際しては、井口氏の息子で現・九州大学医学部名誉教授の井口潔氏とその同期医師らが駆け付け、病院としての揺籃期を乗り切ったという。
慣れない精神科医療に取り組もうとする熱意の裏には、患者が真に必要とする医療を提供するという、医師として譲れない信念があったという。創業期のその信念は今でも、同院の基本方針にその一端を見ることができる。「診療・看護にあたり優しさを大切にして満足感のある入院生活のもとに患者さん1人ひとりの自主・自立を促し、教え育む心をもち社会復帰に努めます」。入院生活が長くなりがちな精神科において、「満足感を抱かせる入院」という視点こそ、真に患者に寄り添うという決意表明にも見えて頼もしい。
その後、同院は2004年4月に「療養病棟―A」(48床)を置き、06年6月に「デイケアぬくみ」、06年7月に「精神科共同住宅南山荘」を併設するなどして規模を拡大。現在は療養病棟46床を含む精神科216床で、ぬくもりのある精神科医療を提供している。
(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
理事長:高山 成吉
所在地:福岡市南区寺塚1-3-47
山口県周南市新宿通1-16(徳山病院)
設 立:1995年11月(井口野間病院)
TEL:092-551-5301
URL:http://www.inokuchinoma.com<プロフィール>
高山 成吉(たかやま・なりよし)
北九州市出身。外科専門医、がん治療認定医、乳腺外科専門医、医学博士。緩和ケアや老人医療も専門に、地域密着型医療を提供。(医)周友会徳山病院理事長、(一財)高雄病院理事長など、兼務多数。ボディービルダーとしても数々の大会に参加している。関連キーワード
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