岐路に立つ孫正義氏の投資家人生 サウジから吹きつける突風に「高転び」の危機(前)
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「AI分野に私の頭の97%を専念させる」。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は投資家に本卦(ほんけ)還りした。今後はソフトバンク・ビジョン・ファンドを活用したAI(人工知能)の分野に重点を置き、通信子会社ソフトバンクを12月19日に東証一部に上場させる。調達した資金はAI企業に投資する。だが、孫正義氏にサウジアラビアから逆風が吹きつける。
ソフトバンクとサウジが共同で10兆円ファンドを設立
2016年9月3日。東京・赤坂の迎賓館。孫正義氏は、サウジアラビアの若き実力者、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(当時・現皇太子)と会談した。副皇太子は、ほとんどの経済閣僚を引き連れ、総勢500人が航空機13機でやってきた。
サウジ国営通信は、副皇太子と孫氏が談笑する写真を配信した。「なぜだ!」と日本のメディアは、驚きをもって伝えた。サウジが写真を掲載した意図は何か。さまざまな臆測を呼んだ。2人が何を話しあったかは、1カ月後に明らかになった。
10月14日。ソフトバンクグループはサウジアラビアの政府系ファンドと共同で投資ファンドを設立すると発表した。新たに設立するのは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」。資金規模は1,000億ドル(10兆円強)。ソフトバンクが5年間に250億ドル(2.7兆円)を出資。サウジの公共投資ファンド(PIF)が450億ドル(5兆円)を出資し、最大の出資者となる。
副皇太子が16年4月に発表した経済改革構想「ビジョン2030」は、石油頼みの構造からの転換を掲げる。国営石油会社サウジアラムコの株式を上場し、得た資金を産業の育成や雇用の創出に振り向ける。そのためには海外からの投資や技術の導入が不可欠だ。その一翼を日本に担ってもらうために、日本を訪れたのである。
ソフトバンクはサウジに2.8兆円を投資
サウジアラビアがソフトバンクの10兆円ファンドに出資する見返りにソフトバンクはサウジに投資する。
ムハンマド皇太子(17年6月に副皇太子より昇格)は17年10月24日、紅海沿岸に新しい都市「NEOM」を建設する5,000億ドル(55兆円)規模の計画を発表した。
ブルームバーグ通信(17年11月15日付)は、「ソフトバンクグループは向こう3~4年でサウジアラビアに最大250億ドル(約2兆8,400億円)を投資する計画だ」と報じた。
「ソフトバンクはサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が紅海沿岸に建設を計画する新しい都市NEOMに最大150億ドルを投じる計画。同社の1,000億ドル規模の投資ファンドであるビジョン・ファンドも、再生可能エネルギーや太陽エネルギーといった電源を多様化する取り組みの一環として、サウジアラビア電力公社に最大100億ドルを投資する」
世界の投資家が様子見を決め込むなかで、孫正義氏の行動が突出している。モンゴルの風を日本に運んでくるという気宇壮大な風力発電構想をもつ孫氏は、皇太子の雄大なビジョンに共鳴するものがあるのだろう。孫社長はサウジとの関係を深めていく。
(つづく)
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