2019年の政局を語る~山崎拓 元自民党副総裁(1)
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2018年の臨時国会は、改正された入管法や水道法などの成立が事実上の強行採決されて幕を閉じた。ほとんどの重要法案を「強行採決」というかたちで決める国会運営について、自民党派閥の元領袖はどう見るのか。いまも政界に影響力を保ち続ける山崎拓元自民党副総裁に、2018年を振り返りながら、今年の政界がどのように動いていくのか、話を聞いた。
選挙区制度について~小選挙区制の弊害~
――かつての自民党は、重要法案についてもっと活発な議論がありました。しかし今回の入管法にしても水道法にしても、ほとんど議論されずに国会に上げてくるというかたちになっています。これはやはり党内で「ものをいえない空気」になっているせいでしょうか?
山崎 安倍政権は、数の論理で政策を法律化しようとしている状況ですね。有無を言わさずという感じ。あまり好ましい姿ではないです。今の議員がレベルダウンしているので、議論が十分にできないわけです。「させない」ということもあるが、「できない」ということもある。能力的な問題もあるということです。
今は官邸が強くなって党が弱くなっています。力関係がおかしくなっているということです。小選挙区制度で出てきた人たちは政党の人気の恩恵にあずかっているので、政党執行部の言いなりになるという法則がもともとあります。さらには、自民党公認になれば誰でも通る。苦労して上がってきているわけではなく、公認に選ばれれば選挙に通ってしまうということです。郵政選挙の時の状況に似ていますね。あの選挙で公認になった人たちはランダムに選んだが―私は選んだ側だったんですが、誰でも通った。小泉ブーム、郵政民営化ブームに乗って選挙に通っていました。
これに対し、今は安倍ブームというよりは野党が弱すぎて、野党に対する危機感が有権者には強い。有権者は、「野党はとにかくダメ」という気持ちになってしまっているんですよね。ですから消去法で、野党がダメなら自民党となる。公明党も与党ですが、公明党は支持層が限定的で票が集まらないですね。自民党だけが1人勝ちするわけです。
――背景にあるのは小選挙区制、ということになると思いますけど、山崎さんは小選挙区制についてはどう見ていらっしゃいますか。
山崎 我々YKK(山崎拓・加藤紘一・小泉純一郎)は断固反対したんですが、それを強引に通したのは小沢一郎さん。小選挙区制が議員のレベルダウンをもたらしたことは間違いないですね。
――かつての中選挙区制のほうが、日本にとってはよかったということですね。
山崎 (中選挙区制によって)多種多様な人材が出てきましたね。5人区のところで自民党が3人くらいですか。3人は政治家としての経歴も違い、皆それぞれ、苦労の度合いも量も質も違う。そういう多種多様な人材が出ていたということは間違いないでしょう。それぞれが派閥に属していたので、派閥政治の弊害があるとは言われましたが、派閥の領袖や幹部を頼って「選挙に出してくれ」ということだったんです。私のように無所属非公認で2回も戦ってやっと通った人間もいましたが、派閥には属していても党の公認が得られないという人間はいくらでもいたわけです。今は無所属で当選する方法が制度上ないのが実情です。無所属でも立候補の権利はあるが、選挙時の特典が何1つないですからね。ですからどうしても公認が必要となり、結果として党の言いなりになる。
活力があったのは要するに中選挙区だからです。平均5人区ですから、5つぐらいの派閥ができ、その間で政権交代が起こることで活力が生まれていたわけです。そのような疑似政権交代がなくなってしまいましたから、今でも派閥と称しているけれども、昔のような派閥の実態がないわけです。さらに、派閥そのものや派閥のリーダーで、手腕、力量、人望のある人がいない。そういう時代になってしまいました。周りもそうだけど、昔のような、簡単にいえば「大物」と呼ばれる者がいない。せいぜい中物ぐらいで、あとはだいたい、小物です。
(つづく)
<プロフィール>
山崎 拓
1936年生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学商学部卒。福岡県議会議員、衆議院議員(12期)。防衛庁長官、 建設大臣、自民党幹事長、同党副総裁などを歴任。近未来政治研究会最高顧問。柔道6段、囲碁5段。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など関連記事
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