「携帯料金は4割値下げ余地がある」~菅官房長官の発言を検証する(上)
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安倍晋三首相は、2015年9月11日に開催された経済財政諮問会議で、携帯電話料金の値下げを検討するように指示したが、その後何ら動きが見られなかった。
それから3年近く経った2018年8月21日、首相の女房役である菅義偉官房長官は札幌市内で講演し、「携帯は国民の共有財産である電波を利用しているにも関わらず、その料金体系はあまりにも不透明で、他国と比較して高すぎるのではという懸念がある。4割程度下げる余地はあると思っている。今後公正取引委員会と十分に連携しながら、利用者が納得できる料金やサービスが実現するよう取り組みたい」と述べたと伝えられる。その発言の裏には、安倍首相の発言を忖度するだけではなく、今度こそ「内閣の威信を賭けて値下げをさせる」との決意が秘められているのではないだろうか。
現在大手キャリアは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社。はたして、安倍首相や菅官房長官の「料金値下げの発言が的を射ているか」どうかを、これから客観的に検証していくことにしたい。【表1】を見ていただきたい。
~この表から見えるもの~
1.携帯電話3社の経営成績
(1)当期純利益について
◆携帯3社の19年3月期の当期純利益は前期比▲660億円の1兆7,100億円を予想しているが、減益はNTTドコモだけで、残り2社は増益となっている。
・トップはNTTドコモで前期比▲1,208億円の6,700億円(15.3%減)。当期純利益1位の座は維持するものの、シェアは44.5%から39.2%に下がっており、収益状況が厳しくなっているのがわかる。
・2位はKDDIで前期比+475億円の6,200億円(8.2%増)。NTTドコモに500億円差まで迫っており、シェアは32.2%から36.3%へと大きく増加している。
・3位のソフトバンクは前期比+73億円の4,200億円(1.8%増)。シェアも23.2%から24.6%に増加している。携帯3社の収益はまちまちの状況となっているようだ。(2)売上高について
◆売上高トップは前期に引き続きKDDIで前期比+1,080億円の5兆1,500億円(2.1%増)を予想している。NTTドコモとは2,900億円、ソフトバンクとは1兆4,500億円の差があり、第1位の座は当面、安泰だとみられる。
・売上高2位はNTTドコモで、前期比+977億円の4兆8,600億円(2.1%増)で第2位の座を守っている。
・3位はソフトバンクで前期比+1,530億円の3兆7,000億円(4.3%増)。3社の中で一番高い増加額・増加率を予想しているのは、新規上場に弾みをつける狙いもあるようだ。(3)当期純利益の売上高比率について
◆売上高に対する当期純利益の比率が一番高いのはNTTドコモで13.8%、続いてKDDIが12.0%、ソフトバンクが11.4%となっている。NTTドコモ、KDDIはともに競争のない独占的な官営通信事業者から民営企業へ移行したものであり、後から参入したソフトバンクの比率はやや低いものの、携帯電話3社の売上高に対する当期純利益の比率は一般企業と比較するとずば抜けて高く、そのことが菅官房長官の「4割値下げ発言」を呼ぶことになったものと推測される。(つづく)
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