2024年09月30日( 月 )

中国経済新聞に学ぶ~中国新世代 iPhoneに興味ない

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発売から3カ月も経たないアップル社のスマートフォン「iPhoneXR」(アイフォーン・テン・アール)が公式販売価格よりも1,200元(約1万9,320円)安く売られている。販売業者が大量に買いだめしたものの、売るに売れなくなって価格が低迷したわけではない。中国の2大ECプラットフォームの京東と蘇寧での正式な値下げで、天猫(TmalI)も仲間に加わると発表した。
ここ数年、値上げばかりで革新(イノベーション)がみられなかったアップルは、今や多くの機種の価格が雪崩を打つように下がっている。市場では、アップルの動きは販売不振を受けて中国消費者に頭を下げたのだとみられている。

アップルの授権の下 EC各社がアップル製品を次々値下げ

 上位3プラットフォームの値下げは年に一度の春節(旧正月、今年は2月5日)に先立つ一大キャンペーンのようにもみえるが、京東と天猫が取材に対して寄せた回答からその巧妙さがうかがえる。というのも、今回の値下げはアップルの授権と許可を受けて行われたものなのだ。

 亰東の値下げについての回答には、「アップルの通知と授権を受けた」とある。天猫は、「今回はアップルが天猫プラットフォームで販売業者に授権して行われた値下げ」という。これはアップルの公式販売価格が変わっていないのに、各ECプラットフォームの「アップル店舗」で大幅な値下げが行われていることの説明にもなる。

アップグレードは振るわず形を変えた値下げの効果は限定的  

 iPhoneの値下げラッシュは突然起きたわけではない。2018年末、アップルは販売促進戦略のスマイルカーブにおいて価格調整を試みていた。

 アップル中国のサイトには、アップグレードに関する期間限定のお知らせがある。現在使用中のiPhoneを下取りに出せば、XRが4,399元から、ⅩSが6,599元から買えるというものだ。つまり、消費者は使用中のiPhoneを最高2,100元で下取りに出せるということだ。アップルが発表したばかりの新機種をアップグレードの下取り対象にするのは今回が初めてであり、またアンドロイド携帯も初めて下取り対象にしている。

 この下取りによるアップグレードキャンペーンはアップルギブバックと呼ばれており、新たに対象に加わった他社ブランドはサムスン、華為、0PPO、vivo、小米の5つだ。このうちサムスンの「GalaxyS7 edge」の最上位機種の下取り価格は510元、華為の「Mate9 Pro」の最上位機種は720元で、中古市場での取引価格と比較するとほとんど優位性がない。よってアップルの形を変えた値下げは売上を伸ばす目立った効果を上げないと予想される。

 あまり成功しそうにないキャンペーンではあるが、その後発表された業績予想をみて、ネットユーザーたちはキャンペーンの真の意図は中国の消費者に頭を下げること、これによって中国の顧客を呼び戻すことにあるのだろうと気づいた。

分析中国の新世代はiPhoneに興味なし

 長らく、iPhoneはアップルの主な収入源であり、一時は売上高の60%近くを占めた。販売量の低下にともない、昨年11月にはiPhoneの部品サプライヤーがそろって販売予想を引き下げた。

 アップルは消費者が設備の1台1台に支払う価格をさらに引き上げる方向に転じた。こうした定価戦略により、iPhoneの小売価格はますます上昇した。この誤った定価戦略がiPhoneの売上減少の直接の原因と考えられる。

 現在の中国携帯電話市場の状況をながめると、iPhoneの定価戦略の誤りが何倍にも拡大している。携帯電話の新世代である中国の95後(1995年から1999年生まれ)や00後(2000年代生まれ)は、もはやiPhoneを標準装備とは考えない。彼らは自分のお気に入りのスターの影響を受けて、vivoやOPPOなどスターが広告塔を務める携帯を使いたがる。中国の携帯新世代の多くは家族のバックアップを必要とし、親たちの多くはまだ学校に行っている子どものために1万元(約16万円)もする携帯を買おうとは思わないということもある。iPhoneの主力消費クラスターの80後と90後(1990年代生まれ)も、国産ブランドに切り崩されつつある。彼らは1万元以上する携帯を買うことはできるが、iPhoneはここ数年、新機種が出ても代わり映えしない同質化の傾向が明らかで、1万元出してアップグレードしてもそれまで使っていたものと大差ない携帯が手に入るだけだ。80後と90後に買い換えを促すことは難しいといえる。

【星星】


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