シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(11)~中国人の決断から学ぶ(後)
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両親の遺伝子を受け継ぐ
平成が終わろうとしている。約30年という月日は外国人の子どもたちが日本に溶け込むのには十分な時間である。
全豪オープンテニスで優勝した大坂なおみ選手は大阪で日本人の母とハイチ出身の父親の間に生まれた。大坂選手は3歳でアメリカに移住し、日本とアメリカの二重国籍をもっている。
18年間のアメリカ生活で、言語は英語がメインで、立ち振る舞いもまさしくアメリカ人そのもの。わずか18年で、すっかりアメリカに同化してしまったようだ。
大連出身の韓夫婦(仮名)が福岡にやってきたのは1988年、1人娘が2歳の時だ。娘が幼稚園に通っていた時、母親が「娘が中国語を喋れなくなった」と悩んでいた。幼稚園の子どもたちと日本語で喋るから、そうなるのも仕方ないだろう。家庭では当然、中国語が飛び交うのだが、それに娘はついてこられずに日本語で返答するという。
韓夫婦は娘をどう育てるかについて議論した。結論は「自分たちは日本に憧れて祖国を離れた。娘にはどこに行くかを自由に決められるような学習環境を提供しよう」ということになったという。
娘は成長し、中国の大学に行きたいと言った。夫婦は共々、喜んで支援した。結果、娘は中国に留学してきていたフランス人と結婚し、パリに移住したそうだ。韓夫婦の国にこだわらない自由な選択する遺伝子を継承していたのだ。
日本に移住してきた一昔前の中国人たちは子どもに生きる気概・目的を厳しく叩き込んでいたという印象を強く抱いている。
日本人の子どもと変わらず
朱(仮名)は上海生まれだ。一度、大学を卒業し、就職。そして北九州の大学に留学した。弟と妹も日本にやってきた。その後、弟は上海に帰り、妹は日本人と結婚して広島に住んでいる。朱は中国から戻ってきた帰国子女の日本人女性と結婚した。朱の妻はあまり日本語が得意ではない。
朱夫婦は2男1女の3人の子どもを授かり、上海に進出した日本企業の通訳として帰国した。その後、朱は上海の友人たちと事業を立ち上げた。朱は1年に2回は帰福していたし、事業立ち上げ当初は福岡の家族にかなりの額を送金していた。しかし、ある時期から事業が行き詰まり、送金が途絶えることもしばしばあった。当時、福岡に住む朱の妻は3人の子どもたちを育てるのに苦労したようだ。身内からの援助があったとも聞く。
家計が厳しかったこともあり。長男は工業高校を卒業後、就職。次男は一応、私立大学の文系学科を卒業した。この2人は海外=中国に目を向けるという意識はゼロ。昨今の無気力な日本人の若者と同じような生活を送ってきた。長男は転職して今は実家暮らし。次男はそれなりの会社に勤務しており、まずは一安心といったところだ。
一方、一人娘は2人の兄たちとは少し違うようだ。正月、帰福していた朱と一緒にきていた娘とで新年会をした。彼女は現在、東京の某私立大学1年生で、来年春にアメリカに留学するという。「卒業したら海外で活躍する」決意に燃えているそうだ。この娘の希望が叶うことを願っている。
東北部出身の周(仮名)が九州大学に留学してきたのは平成の早い時期だった。卒業後、民間企業に就職したが、やがて事業を起こし、なかなかの才覚を発揮した。
周には40歳時に東北部のある自治体に戻れるチャンスがあった。しかし、いろいろと手違いもあり、この話は立ち消えとなった。周は当時を振り返って「まずは日本で活躍しろという天命が下されたと頭を切り替えた」と割り切った様子で語る。周の妻は中国の大学での同窓生である。妻はできたら中国に帰りたいというのが本音のようだ。周夫婦には福岡で生まれた2人の男の子がいる。自信満々な態度を貫いてきた周は子どもたちについてはあまり触れたくない様子だ。子どもたちは一応、大学を卒業したようだが、至って平々凡々な生活に満足しているようだ。周は内心「はがゆいなー」と思っているだろう。しかし、子どもたちは中国で活躍することなど、まったく頭にないようだ。
郷土に錦を飾る
福岡市博多区の中心部に中国北部の田舎料理を提供する中華料理店がある。同店は1月10日まで休業していた。年末の22日から休んでおり、毎年約20日間は休業している。同店の陶夫婦(仮名)は北京の郊外出身で、毎年年末年始休暇を利用して里帰りしているのだ。
この店は開業して30年になる。60歳前後になる夫婦がなぜ福岡にきたのかは謎?日本人の血が流れているということもなさそうだ。
筆者はここのママさんと食事をしながら冗談を言い合う。「お金を貯め込んだから、いつ郷土に錦を飾るのね?」と質問する。するとママさんは「そうねー。あと5年頑張って凱旋帰国するわ。たくさん、お金をもって帰るつもりだけど、田舎には桁違いの金持ちが昔では考えられない程いるよ」と語る。
陶夫婦の一人息子は中国人の妻と別所帯をもっている。男の子がおり、息子夫婦は福岡に残るそうである。
(了)
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