海外のATM展開で躓き 問われるキャッシュレス時代への対応(前)
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(株)セブン銀行
セブン&アイグループの1社として、国内外にATMサービスを展開する(株)セブン銀行(東証一部)は、年間1,200億円超の経常収益をもたらすグループの稼ぎ頭として存在感を強めている。しかし、2019年3月期中間決算では、アメリカやインドネシアなどの海外事業の業績悪化から最終赤字を計上する躓きを見せた。また、そう遠くない将来には、キャッシュレス化という事業環境の激変を迎える。ATMを収益の柱とする事業形態からいかに転換を図っていくのか。
ATMの本質を追求
(株)セブン銀行は、2001年4月に(株)アイワイバンク銀行として設立。同年5月から営業を開始し、ATMサービスを始めた。05年10月に現商号に変更。全国展開するコンビニエンスストア「セブン-イレブン」の店内にATMの設置を進め、07年12月には全都道府県へのATM展開を完了した。
07年9月から電子マネー「nanaco(ナナコ)」のATMでのチャージ、10年1月に個人向けローンサービス、11年3月から海外送金サービスなど、次々と新サービスを導入。12年6月、100万口座を突破。17年11月30日には、ATM設置台数2万4,000台を突破した。
同社の主要事業は、(1)ATMプラットフォーム事業、(2)決済口座事業、(3)海外事業の3つ。そのうち収入のほとんどを(1)の事業が占める。18年9月末現在で合計602社(銀行124行、信用金庫258庫、(信組)127組合など)の金融機関と提携し、それらが発行するキャッシュカードが使えるようになっている。
今や国内の「セブン-イレブン」店内でセブン銀行のATMを見かけないことはなくなった。それどころか、駅構内やバスセンター、観光案内所など、今までATMがなかった場所への設置が進んでいる。金融機関のATMに比べ、セブン銀行のATMはスリムな本体のみの設置であり、スペースに囚われない。
あらゆる金融機関のカードが使えるセブン銀行ATMの台頭は、メガバンクである三菱UFJ銀行と三井住友銀行のATM相互開放を後押ししたようにも思える。他方で、既存の金融機関では、とくに地銀において再編・統合が進んでいる。もはや1つの金融機関しか利用できないATMは時代遅れだ。コスト削減は急務であり、ATMの統合は避けられない流れとなる。競争力のある高性能ATMを有するセブン銀行は、こうしたATM共有化時代にビジネスチャンスがあると捉えている。
この絶対の自信は、現金の出し入れというATM機能の本質を徹底的に追求したところからきている。セブン銀行のATMは進化を続けて現在3世代目。サイズは、幅45cm、高さ167cm、奥行き60cm。第2世代ATMよりも高さを低くしてコンパクトにし、車椅子に座っていても利用しやすくなった。機能面では処理速度が上がり、1時間あたりの利用可能件数が100件(20件増)となった。また、紙幣取り忘れ防止センサーや、取り忘れ時や警報発生時に状況を記録するカメラをATM上部に搭載し、安全面の機能が充実。紙幣の容量を増やすことで現金補充などのコスト抑制も図られている。ATMの利便性を極めた結果、利用者が増え、設置が進むという好循環が続いているのだ。
(つづく)
【山下 康太】<COMPANY INFORMATION>
(株)セブン銀行
代 表:舟竹 泰昭
所在地:東京都千代田区丸の内1-6-1
設 立:2001年4月
資本金:306億7,900万円
U R L:https://www.sevenbank.co.jp関連記事
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