海外のATM展開で躓き 問われるキャッシュレス時代への対応(後)
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(株)セブン銀行
海外進出に誤算?
コンビニ以外への設置も行われているが、現状、国内の設置台数の伸びしろは限られている。依然としてATMが収入の柱であることから、その設置場所は海外に求めていかざるを得ない。セブン銀行は、12年10月にアメリカの金融会社(現・FCTI,Inc. 以下「FCTI」)を子会社化し、アメリカ国内のセブン-イレブン店内へのATM設置を開始。14年6月にインドネシアで合弁会社PT.ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONAL(以下、「ATMi」)を設立、15年7月にカナダで現地法人FCTI Canada,Inc.を設立し、それぞれ海外ビジネスの開拓に取り組み始めた。
19年3月期の中間決算では、FCTIとATMiの収支が当初計画よりも下回って推移しているため、主にFCTIの株式取得時に発生したのれんを減損損失145億9,600万円として計上。親会社株主に帰属する中間純利益(連結)は2億5,800万円の赤字となった。
海外におけるATM台数は、18年6月末時点でFCTIが1万3,235台(うち約8,000台が米国セブン-イレブンの設置)。FCTI単独の業績は、経常収益119.1百万米ドル、経常利益▲12.3百万米ドル、中間純利益102.3百万米ドル。1ドル=112円で換算して約114億円の赤字を出したことになる。同社は、「進出当時と現在のビジネス環境に変化があった」とし、アメリカでの事業は続ける一方、インドネシアについては事業方針を変更し、撤退するとしている。詳細は明らかにされていないが、元来、食料・日用品以外では現金決済が少ないアメリカでのキャッシュレス化のスピードに対応できなかったことが考えられる。
なお、18年3月期の連結業績は、経常収益1,276億5,600万円(前期比4.9%増)、経常利益383億500万円(同4.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益253億100万円(同0.7%増)を計上。19年3月期の連結業績予想は、経常収益1,472億円、経常利益399億円、親会社株主に帰属する当期純利益128億円。海外事業による特別損失計上で最終利益を▲140億円下方修正。増収減益となる見込みである。
新時代への対応
海外発行カード対応、電子マネーのチャージ、音声ガイダンスによる取引、個人向けローン、海外送金サービス、12言語対応、デビット付キャッシュカード、スマホATMサービスなど、さまざまな機能・サービスを搭載したセブン銀行のATM。18年5月からは「現金受取サービス」を開始。これは、企業から個人宛ての送金をセブン銀行ATMとセブン-イレブンのレジで受取ることができる新サービスで、契約合意企業数はすでに100社を突破したという。
しかしながら、そう遠くはない将来、キャッシュレス化がやって来る。セブン銀行では、ベンチャーへの出資や協業に新たな可能性を模索しており、その窓口となる専門チーム「セブン・ラボ」を立ち上げた。事業名にあるように、ATMが「プラットフォーム」となり、新しいサービスを利用できるようになる。すでに、協業によって雇用形態の多様化に対応した「即払い給与サービス」(ドレミング(株))は始まっている。来年2月からは、セブン銀行が出資するTORANOTEC(株)と行う「リアルおつり投資」プロジェクトの実証実験がスタート。硬化専用端末を用い、買い物のおつりで資産運用をするという内容だ。
19年度から導入する計画の第4世代ATMでは顔認証システムを搭載するというセブン銀行。キャッシュの出入というATMの本質を極めた先に、キャッシュレス時代におけるニーズを創出できるか否か。その進化が注目される。
(了)
【山下 康太】<COMPANY INFORMATION>
(株)セブン銀行
代 表:舟竹 泰昭
所在地:東京都千代田区丸の内1-6-1
設 立:2001年4月
資本金:306億7,900万円
U R L:https://www.sevenbank.co.jp関連記事
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